2026冬季オリンピックのアルペンスキーは、イタリア北部の2会場で2月7日から18日にかけて実施されました。ミラノ・コルティナ2026大会のアルペンスキー競技では、男女合わせて10種目が行われ、スイスが金メダル4個を獲得して圧倒的な強さを見せています。
ブラジル初の冬季五輪メダリスト誕生や、地元イタリアの英雄ブリニョーネの2冠達成など、歴史に残るドラマが連日繰り広げられました。
この記事では、各種目のルール解説から会場の特徴、全種目の結果と注目選手のエピソード、そして日本代表の戦いまで、2026冬季オリンピックのアルペンスキーに関する情報を網羅的にお届けします。「これだけ読めば全体像がわかる」という内容を目指しました。アルペンスキー初心者の方から熱心なファンの方まで、幅広い読者にお楽しみいただける記事です。
2026冬季オリンピック アルペンスキーの大会概要と開催会場
ミラノ・コルティナ2026大会の基本情報
2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピックは、2月6日から22日までの日程で開催されました。開催都市はイタリアの2都市であるミラノとコルティナダンペッツォです。コルティナダンペッツォは1956年大会以来、70年ぶりのオリンピック開催となりました。
アルペンスキー競技は2月7日に始まり、2月18日に全日程が終了しています。競技種目数は男女合わせて10種目で、前回の北京2022大会から1種目減りました。これは、混合パラレル団体が廃止され、新たに団体複合(チームコンバインド)が導入されたためです。
出場枠は合計306人分が各国に配分されました。1カ国あたりの最大出場人数は男女各11人の22人です。個人種目は各4人まで、2人1組の団体複合は4チームまで出場が認められています。
男子会場:ボルミオ「ステルヴィオ・スキー場」
男子5種目すべての舞台となったのが、ボルミオにあるステルヴィオ・スキー場です。「世界で最も過酷なコース」とも評されるこの会場は、アルペンスキーの歴史において特別な存在です。
ステルヴィオコースの主なスペックは以下のとおりです。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 全長 | 3,442m |
| 標高差 | 1,023m |
| 最大勾配 | 63% |
コースの特徴は、氷のように硬く締まった路面と急峻な斜面の連続にあります。スタートからゴールまで息をつく暇がなく、選手には最高レベルの体力と技術が求められます。ワールドカップでも毎年開催される伝統的な会場であり、選手たちにとっても馴染み深いコースです。
女子会場:コルティナダンペッツォ「トファーネ・アルペンスキーセンター」
女子5種目すべてが行われたのが、コルティナダンペッツォにあるトファーネ・アルペンスキーセンターです。正式名称は「オリンピア・デッレ・トファーネ」と呼ばれています。
このコースは全長2.56km、標高差は約750m、最大傾斜度は64%を誇ります。世界遺産ドロミテ山塊を背景にした美しい景観が特徴ですが、その難易度の高さでも有名です。気象条件の変化が激しく、「気まぐれなコース」とも称されています。
1956年のコルティナダンペッツォ大会でもアルペンスキー競技が行われた歴史的な場所です。70年の時を超えて再びオリンピックの舞台となったことは、コース自体にも特別な意味がありました。
アルペンスキーの種目とルールを徹底解説
高速系種目:ダウンヒル(滑降)
ダウンヒルはアルペンスキーの中で最もスピードが出る種目です。選手は時速100kmを超える猛スピードでコースを駆け抜けます。旗門(ゲート)の間隔が広く設定されているため、ターンの回数は少なくなります。
レースは1回の滑走で勝負が決まります。コースの長さは1分半以上を要する長いものが使用されます。選手たちはレース前のトレーニングランでコースのライン取りを確認できることも特徴です。
この種目で最も重要なのは、エアロダイナミクス(空気抵抗)の低減です。選手は極限までコンパクトな姿勢をとり、空気抵抗を減らしながら滑走します。わずかな姿勢の乱れがタイムに直結するため、精神的な強さも求められます。
高速系種目:スーパーG(スーパー大回転)
スーパーGは1982年に国際スキー・スノーボード連盟(FIS)が導入した比較的新しい種目です。ダウンヒルに次いで2番目にスピードが出ます。コースにはペア(2つ1組)の旗門が並んでおり、ひとつでもゲートを通過し損ねると失格となります。
ダウンヒルと同様に1回の滑走でタイムを競います。スーパーGはダウンヒルと同じ斜面を使用しますが、旗門の配置が異なります。ダウンヒルよりもターンの回数が多いため、スピードへの対応力とターン技術の両方が必要です。
スーパーGではトレーニングランが行われないことも大きな特徴です。選手はコースのインスペクション(下見)のみで本番に臨みます。そのため、初見での対応力と判断力が勝敗を分けることになります。
技術系種目:ジャイアントスラローム(大回転)
ジャイアントスラローム(GS)は、スラロームよりも旗門の間隔が広く、大きなカーブを描きながら滑走する種目です。1回の滑走にかかる時間は1分から1分半程度です。
レースは同じ斜面上の異なるコースセットで2回行われます。1本目を完走したすべての選手が2本目に進出できます。2本目の滑走順は、1本目の30位の選手がトップバッターとなり、29位、28位と順に滑ります。1位の選手は30番目にスタートする仕組みです。
2本の合計タイムで順位が決まります。コースが荒れていく中で後半に滑る上位選手にとっては、不利な条件をどう克服するかが腕の見せどころです。
技術系種目:スラローム(回転)
スラロームはアルペンスキーの中で最もレース時間が短い種目です。選手は通常50秒から60秒でゴールに到達します。同時に、最も多くの旗門が設置される種目でもあります。
連続して並ぶ旗門を左右に縫うように滑走するため、瞬発力と正確なスキー操作が不可欠です。旗門通過時にポールに身体が接触するため、選手は手、脚、顔などに特別なプロテクターを装着します。
ジャイアントスラロームと同様に2回滑走し、合計タイムで勝敗が決まります。2本目のスタート順もジャイアントスラロームと同じ方式です。1本目の30位から逆順にスタートし、1位の選手が最後に滑ります。
2026年大会の新種目:団体複合(チームコンバインド)
ミラノ・コルティナ2026大会で初めて採用された種目が団体複合です。前回大会まであった個人複合(アルペンコンバインド)と混合パラレル団体の2種目が廃止され、その代わりに導入されました。
団体複合のルールは次のとおりです。同じ国を代表する2人の選手がチームを組みます。第1走者がダウンヒル(スピード系パート)を滑り、第2走者がスラローム(技術系パート)を担当します。両パートのタイム合計で最終順位が決定します。
この種目の魅力は、スピード系と技術系という異なる専門分野の選手がタッグを組む点にあります。国としての総合力が問われるため、多様な人材を擁する強豪国が有利になる傾向があります。
男子種目の全結果と注目のレース展開
男子ダウンヒル:フォン・アルメンが衝撃の金メダル
2月7日に行われた男子ダウンヒルは、大会最初のアルペンスキー種目として注目を集めました。
| 順位 | 選手名 | 国 | タイム |
|---|---|---|---|
| 金 | フランヨ・フォン・アルメン | スイス | 1:51.61 |
| 銀 | ジョヴァンニ・フランツォーニ | イタリア | 1:51.81 |
| 銅 | ドミニク・パリス | イタリア | 1:52.11 |
24歳のフォン・アルメンは、ステルヴィオの難コースで圧巻の滑りを見せました。2位のフランツォーニに0.20秒の差をつけての金メダル獲得です。地元イタリアのフランツォーニとパリスが銀と銅を分け合い、会場は大いに沸きました。
このレースは、フォン・アルメンにとってオリンピックデビュー戦でした。にもかかわらず、ワールドカップで培った実力を遺憾なく発揮し、見事に頂点に立っています。
男子団体複合:スイスが大会初の金
2月9日に行われた男子団体複合は、今大会で初めて実施された新種目です。
| 順位 | 国 | 選手名 | タイム |
|---|---|---|---|
| 金 | スイス | フォン・アルメン+タンギー・ネフ | 2:44.04 |
| 銀 | オーストリア | クリーヒマイヤー+フェラー | 2:45.03 |
| 銅 | スイス | オーダーマット+メイヤール | (同率3位なし) |
スイスはダウンヒル王者フォン・アルメンとスラロームのスペシャリストであるタンギー・ネフという理想的なペアを編成しました。フォン・アルメンがダウンヒルで貯金を作り、ネフがスラロームで守り切る完璧な連携でした。
なお、銅メダルは授与されないという珍しい結果となりました。記録上、3位にはスイスのオーダーマットとメイヤールのペアが入りましたが、同一国が複数メダルを獲得する形となっています。
フォン・アルメンはこの時点で2つ目の金メダルを獲得し、ミラノ・コルティナ2026大会で最初の複数金メダリストとなりました。
男子スーパーG:フォン・アルメンが驚異の3冠
2月11日の男子スーパーGで、フォン・アルメンはさらなる偉業を達成しました。
| 順位 | 選手名 | 国 | タイム |
|---|---|---|---|
| 金 | フランヨ・フォン・アルメン | スイス | 1:25.32 |
| 銀 | ライアン・コクラン=ジーグル | アメリカ | 1:25.45 |
| 銅 | マルコ・オーダーマット | スイス | 1:25.60 |
フォン・アルメンは1大会で3つの金メダルを獲得する快挙を成し遂げました。スイス人選手が1つの冬季大会で3つの金メダルを手にしたのは史上初のことです。高速系種目のダウンヒルとスーパーGを同時制覇する「スピードダブル」は、近年のアルペンスキー界では極めて珍しい記録です。
銀メダルのコクラン=ジーグル(アメリカ)は、0.13秒差まで迫る好走を見せました。銅メダルのオーダーマットは、前シーズンまでワールドカップ総合王者として君臨してきた実力者です。
男子ジャイアントスラローム:ブラジルに歴史的金メダル
2月14日の男子ジャイアントスラロームは、冬季オリンピック史に残る歴史的なレースとなりました。
| 順位 | 選手名 | 国 | タイム |
|---|---|---|---|
| 金 | ルーカス・ピニェイロ・ブラーテン | ブラジル | 2:25.00 |
| 銀 | マルコ・オーダーマット | スイス | 2:25.58 |
| 銅 | ロイク・メイヤール | スイス | 2:26.17 |
25歳のピニェイロ・ブラーテンは、ブラジル代表として出場し、金メダルを獲得しました。これはブラジルのみならず、南米大陸全体にとっても冬季オリンピック史上初のメダルです。ブラジル大統領がSNSで「前例のない偉業」と称えるほどの大ニュースとなりました。
ピニェイロ・ブラーテンはノルウェー人の父とブラジル人の母を持つ選手です。かつてはノルウェー代表として活躍していましたが、2023年にブラジル国籍に変更しました。この決断が冬季五輪の歴史を塗り替える結果につながったのです。
2位のオーダーマットとの差は0.58秒でした。2本のラン合計でこの差は十分に大きく、ピニェイロ・ブラーテンの完成度の高さがうかがえます。
男子スラローム:メイヤールが技術系の頂点に
2月16日に行われた男子スラロームは、悪天候による過酷なコンディションの中で実施されました。
| 順位 | 選手名 | 国 | タイム |
|---|---|---|---|
| 金 | ロイク・メイヤール | スイス | 1:53.61 |
| 銀 | ファビオ・グストライン | オーストリア | 1:53.96 |
| 銅 | ヘンリック・クリストファーセン | ノルウェー | 1:54.74 |
このレースでは1本目に30人以上の選手が途中棄権するという異例の展開でした。荒れたコースと視界不良が原因です。その中でメイヤールは安定した滑りで1本目をトップ通過し、2本目も崩れることなくゴールしています。
スイスはこの種目で、男子アルペン全5種目中4種目で金メダルを獲得するという圧倒的な成績を残しました。まさに「スイスの大会」と呼ぶにふさわしい結果です。
女子種目の全結果と感動のストーリー
女子ダウンヒル:ブリージー・ジョンソンが0.04秒差の激戦を制す
2月8日の女子ダウンヒルは、トファーネの難コースで息をのむ接戦が繰り広げられました。
| 順位 | 選手名 | 国 | タイム |
|---|---|---|---|
| 金 | ブリージー・ジョンソン | アメリカ | 1:36.10 |
| 銀 | エマ・アイヒャー | ドイツ | 1:36.14 |
| 銅 | ソフィア・ゴッジャ | イタリア | 1:36.69 |
ジョンソンは2位のアイヒャーにわずか0.04秒の差で勝利しました。100分の4秒という僅差は、アルペンスキーの勝負の厳しさを象徴しています。この金メダルはアメリカチームにとって今大会最初のメダルでもありました。
なお、このレースでは41歳のリンゼイ・ボン(アメリカ)が集大成の舞台として出場しましたが、途中転倒し棄権という結果に終わっています。ベテランの挑戦に世界中から惜しむ声が上がりました。
女子団体複合:オーストリアが僅差の勝利
2月10日の女子団体複合も接戦となりました。
| 順位 | 国 | 選手名 | タイム |
|---|---|---|---|
| 金 | オーストリア | レドラー+フーバー | 2:21.66 |
| 銀 | ドイツ | ヴァイドレ=ヴィンケルマン+アイヒャー | 2:21.71 |
| 銅 | アメリカ | ワイルズ+モルツァン | 2:21.91 |
金と銀の差はわずか0.05秒でした。オーストリアは第1走のレドラーがダウンヒルで好タイムを記録し、フーバーがスラロームで守り切る展開でした。ドイツはダウンヒルの金メダリスト争いで銀のアイヒャーがスラロームを担当し、追い上げましたが届きませんでした。
女子スーパーG:ブリニョーネが地元で涙の金
2月12日の女子スーパーGは、今大会で最も感動的なレースのひとつとなりました。
| 順位 | 選手名 | 国 | タイム |
|---|---|---|---|
| 金 | フェデリカ・ブリニョーネ | イタリア | 1:23.41 |
| 銀 | ロマーヌ・ミラドリ | フランス | 1:23.82 |
| 銅 | コーネリア・ヒュッター | オーストリア | 1:23.93 |
35歳のブリニョーネは、地元イタリアの期待を一身に背負って出場しました。2025年4月に前十字靭帯(ACL)を断裂する大ケガを負いましたが、驚異的なリハビリを経て復帰しています。そのカムバックストーリーは世界中のスポーツファンの心を打ちました。
この勝利により、ブリニョーネはアルペンスキーのオリンピック金メダリストとして史上最年長記録を樹立しました。35歳での金メダル獲得は、年齢を超えた挑戦の価値を証明するものでした。
女子ジャイアントスラローム:ブリニョーネが2冠達成
2月15日の女子ジャイアントスラロームで、ブリニョーネはさらなる快挙を成し遂げました。
| 順位 | 選手名 | 国 | タイム |
|---|---|---|---|
| 金 | フェデリカ・ブリニョーネ | イタリア | 2:13.50 |
| 銀 | サラ・ヘクター | スウェーデン | 2:14.12 |
| 銅 | テア・ルイーゼ・シュテルネスンド | ノルウェー | 2:14.12 |
スーパーGに続く2種目目の金メダルです。合計タイムで2位に0.62秒の差をつける圧勝でした。銀と銅は同タイムの同着です。
ブリニョーネは「自分の限界を作ったくなかった」とレース後に語っています。前十字靭帯断裂からの復帰後わずか数ヶ月で五輪2冠を達成するという離れ業は、スポーツ史に残る偉業です。地元コルティナの観衆は彼女に割れんばかりの拍手を送りました。
女子スラローム:シフリンが8年ぶりの五輪金
2月18日、アルペンスキー競技最終日に行われた女子スラロームは、レジェンドの復活劇となりました。
| 順位 | 選手名 | 国 | タイム |
|---|---|---|---|
| 金 | ミカエラ・シフリン | アメリカ | 1:39.10 |
| 銀 | カミーユ・ラスト | スイス | 1:40.60 |
| 銅 | アンナ・スベン=ラルソン | スウェーデン | 1:40.81 |
ワールドカップ通算108勝を誇るシフリンが、2018年平昌大会以来8年ぶりとなるオリンピック金メダルを手にしました。1本目で0.82秒のリードを築き、2本目も安定した滑りで逃げ切っています。
シフリンにとって通算3つ目のオリンピック金メダルです。2014年ソチ大会のスラロームで18歳にして初の金メダルを獲得して以来、長年にわたりアルペンスキー界のトップに君臨してきた彼女の偉大さが改めて証明されました。
2位のラストとの差は1.50秒です。女子スラロームのオリンピック史上3番目に大きい差であり、シフリンの圧倒的な実力を示す数字です。
メダル獲得国ランキングと各国の戦績分析
国別メダル一覧
2026冬季オリンピックのアルペンスキーにおける国別メダル獲得数は以下のとおりです。
| 順位 | 国 | 金 | 銀 | 銅 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | スイス | 4 | 3 | 2 | 9 |
| 2 | イタリア | 2 | 1 | 2 | 5 |
| 3 | アメリカ | 2 | 1 | 1 | 4 |
| 4 | オーストリア | 1 | 2 | 1 | 4 |
| 5 | ブラジル | 1 | 0 | 0 | 1 |
| 6 | ドイツ | 0 | 2 | 0 | 2 |
| 7 | ノルウェー | 0 | 1 | 1 | 2 |
| 7 | スウェーデン | 0 | 1 | 1 | 2 |
| 9 | フランス | 0 | 1 | 0 | 1 |
スイスの圧倒的強さの背景
スイスは金4、銀3、銅2の合計9個のメダルを獲得し、アルペンスキー大国としての地位を改めて示しました。この圧倒的な成績を支えたのは、フォン・アルメンの3冠とメイヤールのスラローム金を筆頭とする選手層の厚さです。
オーダーマットも個人種目では金には届かなかったものの、銀1つと銅1つを獲得しています。チーム全体として安定した成績を残した点が、メダル数に表れています。
スイスの強さの要因としては、国を挙げたスキー育成システムの充実が挙げられます。ジュニア時代からワールドカップレベルのコーチングを受けられる環境が整っており、次々と世界トップクラスの選手が輩出されています。
開催国イタリアの活躍
イタリアは金2、銀1、銅2の合計5個のメダルを獲得しました。ブリニョーネの2冠がチームをけん引し、男子ダウンヒルでもフランツォーニとパリスが銀と銅を獲得しています。
ブリニョーネの活躍は地元ファンの期待に完璧に応えるものでした。特にコルティナダンペッツォの女子種目で金メダルを2つ獲得したことは、開催国としてこの上ない結果です。
アメリカの存在感
アメリカも金2、銀1、銅1の合計4個のメダルを獲得する好成績でした。ジョンソンの女子ダウンヒル金とシフリンの女子スラローム金が光ります。
シフリンは大回転では11位に終わりましたが、最も得意とするスラロームで底力を発揮しました。30歳を超えてなお第一線で戦い続ける姿は、多くのファンに感動を与えています。
ブラジルの歴史的快挙
ブラジルはピニェイロ・ブラーテンの男子ジャイアントスラローム金の1個のみですが、その価値は計り知れません。冬季五輪でブラジルどころか南米大陸から初のメダリストが誕生したのです。
ブラジルでは熱帯気候のためスキーは一般的なスポーツではありません。それだけに、この金メダルは国民に大きな衝撃と感動を与えました。ブラジル国内のメディアは連日トップニュースで報じ、サンバのリズムで祝福するファンの映像が世界中に配信されています。
日本代表の戦いと今後の展望
男子代表:相原史郎の初出場と健闘
日本のアルペンスキー男子代表として唯一出場したのが、相原史郎選手(小泉SC)です。種目は男子スラロームで、五輪初出場での挑戦でした。
相原選手の成績は以下のとおりです。
| ラン | タイム | 順位 |
|---|---|---|
| 1本目 | 1:00.83 | 22位 |
| 2本目 | 0:58.75 | – |
| 合計 | 1:59.58 | 20位 |
このレースでは1本目に30人以上が途中棄権する過酷な条件でした。38番スタートの相原選手は安定した滑りで1本目を完走し、22位で2本目への進出を決めています。ゴール後にガッツポーズを見せる姿が印象的でした。
2本目では順位を2つ上げて最終20位となりました。世界の一流選手が次々とコースアウトする中での2本完走は、大きな価値があります。レース後、相原選手は「4年後はチームでメダルを」と今後への意気込みを語っています。
女子代表:安藤麻の悔しい途中棄権
女子代表として出場した安藤麻選手(日清医療食品)は、最も得意とする女子スラロームに専念して今大会に臨みました。自身3度目のオリンピックです。
しかし結果は、1本目で旗門をまたいでしまい途中棄権に終わっています。今シーズンのワールドカップでは開幕当初から安定した成績を残しており、2本目に残れる30位以内を十分に狙える実力がありました。
安藤選手は「悔しいのひと言」とレース後にコメントしています。1桁順位も射程圏内だっただけに、実力を発揮できなかった悔しさはひとしおだったことでしょう。
日本アルペンスキーの現状と課題
日本のアルペンスキー競技は、1956年コルティナダンペッツォ大会で猪谷千春選手が銀メダルを獲得して以来、長くメダルから遠ざかっています。同じコルティナの地で開催された今大会でも、メダル獲得には至りませんでした。
課題として挙げられるのは、ヨーロッパの強豪国と比較した場合の練習環境の差です。スイスやオーストリアでは幼少期から世界レベルのコースで練習できますが、日本ではそうした環境が限られています。
一方で、相原選手のように若い世代が着実に力をつけている点は明るい材料です。海外を拠点に活動する選手が増えていることも、レベルアップにつながっています。2030年大会に向けた4年間の成長に期待が高まります。
大会のハイライトと記録的な出来事
フォン・アルメンの1大会3冠
今大会のアルペンスキーで最も輝いた選手は、間違いなくスイスのフランヨ・フォン・アルメンです。ダウンヒル、団体複合、スーパーGの3種目で金メダルを獲得しました。
24歳という若さでのこの快挙は、アルペンスキー界の勢力図を大きく塗り替える出来事です。1大会で3つの金メダルを獲得したスイスのアルペンスキー選手は史上初であり、その名は冬季五輪の歴史に刻まれました。
フォン・アルメンの強さの秘密は、高速系種目での安定感にあります。ダウンヒルとスーパーGという2つのスピード種目を制したことは、彼のスピードへの適応力の高さを証明しています。
ブリニョーネの復活と記録更新
フェデリカ・ブリニョーネの2冠達成も、今大会を象徴する出来事です。2025年4月のACL断裂からわずか10ヶ月での金メダル獲得は、医学的にも驚異的な回復速度です。
35歳でのオリンピック金メダルは、アルペンスキー女子のオリンピック史上最年長記録です。さらに3日後のジャイアントスラロームでもう1つ金メダルを加え、自身が持つ最年長記録をさらに更新しました。
ブリニョーネは通算4つのオリンピックメダルを保有しており、イタリアのアルペンスキー史上最も成功した女子選手のひとりです。
ピニェイロ・ブラーテンが切り拓いた新しい歴史
ルーカス・ピニェイロ・ブラーテンの男子ジャイアントスラローム金メダルは、今大会で最も意外性のある結果でした。冬季スポーツとは縁遠いブラジルから金メダリストが誕生するとは、大会前にはほとんど予想されていなかったからです。
彼のバックグラウンドも注目に値します。ノルウェーで生まれ育ち、ノルウェー代表として活躍した後、母親の祖国であるブラジルに国籍変更しました。「ブラジルの旗を掲げてオリンピックに出たい」という思いが、この歴史的快挙につながっています。
この出来事は、冬季スポーツのグローバル化を象徴するエピソードでもあります。従来のヨーロッパ中心の勢力図に、南米からの風穴が開けられたことは、競技の将来にとっても大きな意味を持ちます。
シフリンの8年越しの雪辱
ミカエラ・シフリンの女子スラローム金メダルは、長いキャリアの中でも特別な意味を持つ勝利でした。2018年平昌大会以来、8年間オリンピックではメダルに手が届いていなかったからです。
2022年北京大会ではスラロームで途中棄権するなど、五輪の舞台で実力を発揮できない苦しい時期が続いていました。その雪辱を果たした今回の金メダルは、シフリン自身にとっても大きな解放感があったはずです。
通算3つのオリンピック金メダルは、アメリカのアルペンスキー選手として歴代最多タイ記録です。ワールドカップ108勝という圧倒的な実績を持ちながらも、五輪では苦しんできたシフリンが最後に笑顔を見せる結末は、多くのファンの胸を打ちました。
アルペンスキーの全日程一覧と放送情報
競技スケジュール(全種目確定済み)
2026冬季オリンピックのアルペンスキー全種目は、以下のスケジュールで実施されました。時刻はすべて現地時間(中央ヨーロッパ時間、UTC+1)です。日本時間は+8時間です。
| 日付 | 現地時間 | 種目 |
|---|---|---|
| 2月7日 | 11:30 | 男子ダウンヒル |
| 2月8日 | 11:30 | 女子ダウンヒル |
| 2月9日 | 10:30/14:00 | 男子団体複合 |
| 2月10日 | 10:30/14:00 | 女子団体複合 |
| 2月11日 | 11:30 | 男子スーパーG |
| 2月12日 | 11:30 | 女子スーパーG |
| 2月14日 | 10:00/13:30 | 男子ジャイアントスラローム |
| 2月15日 | 10:00/13:30 | 女子ジャイアントスラローム |
| 2月16日 | 10:00/13:30 | 男子スラローム |
| 2月18日 | 10:00/13:30 | 女子スラローム |
技術系種目(ジャイアントスラロームとスラローム)は、午前に1本目、午後に2本目が行われる2部構成です。団体複合もダウンヒルとスラロームの2パートに分かれて実施されました。
日本からの視聴方法
日本での放送は、NHKおよび民放各局が中継を担当しました。現地時間の11:30開始は日本時間の19:30に当たり、ゴールデンタイムでの視聴が可能だったことは幸いでした。
インターネットでの配信は、TVerやNHKプラス、各放送局の公式配信サービスなどで提供されています。見逃し配信も充実しており、レースの模様を後から視聴することも可能です。
アルペンスキーの歴史とオリンピックでの歩み
競技の起源と発展
アルペンスキーの「アルペン」はドイツ語で「アルプス」を意味します。その名のとおり、ヨーロッパアルプス地方で20世紀初頭に発展したスキー技術がルーツです。
もともとスキーは北欧で移動手段として発達した「ノルディックスキー」が原型でした。それがアルプスの急斜面を滑り降りる技術として独自に発展し、アルペンスキーとして確立されました。
オリンピックでの採用は1936年ガルミッシュ=パルテンキルヒェン大会(ドイツ)が最初です。当初はアルペンコンバインド(複合)のみでしたが、その後種目が増え、現在に至っています。
歴代のレジェンドたち
アルペンスキーのオリンピック史を語る上で欠かせない選手を紹介します。
ジャン=クロード・キリー(フランス)は、1968年グルノーブル大会でアルペン3冠(ダウンヒル、ジャイアントスラローム、スラローム)を達成した伝説的な選手です。
アルベルト・トンバ(イタリア)は「ラ・ボンバ」の愛称で知られ、1988年と1992年の2大会でジャイアントスラロームの金メダルを獲得しました。
リンゼイ・ボン(アメリカ)はワールドカップ通算82勝を誇る女子アルペンスキーのレジェンドです。今大会でも41歳にして出場しましたが、ダウンヒルで転倒棄権に終わっています。
日本のアルペンスキー五輪史
日本のアルペンスキーとオリンピックの関わりは、1956年コルティナダンペッツォ大会にさかのぼります。猪谷千春選手が男子スラロームで銀メダルを獲得し、日本人初の冬季オリンピックメダリストとなりました。
猪谷選手は「ブラックキャット」の異名で世界に知られた名スキーヤーです。70年後の同じコルティナの地で、日本代表がメダルを目指す姿は感慨深いものがありました。
その後、日本のアルペンスキーは長くメダルから遠ざかっています。1998年長野大会では地元の声援を受けて健闘しましたが、表彰台には届きませんでした。世界との差を縮めるために、海外遠征の拡充や指導体制の強化が続けられています。
アルペンスキー観戦をもっと楽しむためのポイント
高速系と技術系の見方の違い
アルペンスキーの観戦を楽しむ上で、高速系と技術系の違いを理解しておくと面白さが格段に増します。
高速系種目(ダウンヒル、スーパーG)では、スピードとライン取りが最大の見どころです。選手がどれだけコンパクトな姿勢を保ち、空気抵抗を減らしているかに注目してください。カーブでの身体の傾き具合も重要な観戦ポイントです。
技術系種目(スラローム、ジャイアントスラローム)では、旗門間のリズミカルな切り替えし動作が見どころです。特にスラロームでは、ポールをなぎ倒しながら最短距離を攻める選手の技術に圧倒されます。
タイム差の読み方
アルペンスキーでは0.01秒(100分の1秒)単位でタイムが計測されます。ダウンヒルのような長い種目では0.01秒の差がコース上では約30cmの距離に相当します。
テレビ中継では中間タイム(インターバルタイム)がリアルタイムで表示されます。リーダー(暫定1位)とのタイム差が赤色で表示されると遅いことを、緑色で表示されると速いことを意味します。この色の変化に注目すると、レースのリアルタイムの展開がわかりやすくなります。
天候とコース状態が結果を左右する
アルペンスキーでは天候とコース状態が結果に大きな影響を与えます。特にスラロームとジャイアントスラロームの2本目では、先に滑った選手のエッジ跡によってコースが荒れていきます。
後半スタートの上位選手は荒れたコースで滑ることになるため、不利になりがちです。しかし、それを補って余りある実力を持つ選手がメダルを獲得するのが通常です。今大会のメイヤールやシフリンの勝利は、その典型例といえます。
風や降雪も大きな要因です。今大会の男子スラロームで30人以上が途中棄権したのは、視界不良と風の影響が大きかったとされています。
2026冬季オリンピック アルペンスキーが示した競技の未来
2026冬季オリンピックのアルペンスキーは、競技の新しい時代の幕開けを感じさせる大会でした。フォン・アルメンやピニェイロ・ブラーテンといった20代の若手が主役を務める一方で、35歳のブリニョーネや30歳のシフリンがベテランの底力を見せています。
新種目の団体複合(チームコンバインド)は、男女ともに接戦が続き、観客を大いに沸かせました。スピード系と技術系の選手がペアを組むという新しいフォーマットは、チーム競技としての魅力を存分に発揮しています。今後のオリンピックでも定番種目として定着していくことでしょう。
冬季スポーツのグローバル化という観点では、ブラジルの金メダル獲得が大きな転機となりました。従来の「ヨーロッパと北米の競技」というイメージを打破し、世界中の若者にアルペンスキーへの夢を与えた出来事です。
日本のアルペンスキーにとっては、相原史郎選手の20位完走が今後への布石となります。世界の壁は依然として高いですが、若い世代が国際経験を積み重ねている点は大きな希望です。猪谷千春選手の銀メダルから70年。再びメダルの輝きを手にする日を目指して、日本のアルペンスキー界は歩みを続けています。
ミラノ・コルティナ2026大会は、アルペンスキーの伝統と革新が交差する忘れられない大会となりました。次の冬季オリンピックでは、どのような新たなドラマが生まれるのか。世界最高峰の舞台で繰り広げられる0.01秒の戦いから、これからも目が離せません。

