失業保険の受給条件について詳しく知りたい方、手続きの方法や給付額でお悩みの方に朗報です。2025年4月からの制度改正により、失業保険の給付制限期間が大幅に短縮され、より多くの方が安心して利用できるようになりました。
この記事では、失業保険の受給条件から具体的な手続き方法、気になる給付額の計算方法まで、専門的な知識を持つ社会保険労務士監修のもと、最新の制度改正内容を踏まえて網羅的に解説します。
失業保険(基本手当)とは
失業保険(正式名称は雇用保険の基本手当)は、労働者が失業した際に生活の安定を図りながら就職活動を行えるよう国が支援する制度です。雇用保険法に基づいて運営され、厚生労働省が所管しています。
失業保険は単なる生活費の補償ではありません。失業者の生活安定と再就職の促進を目的とした積極的労働市場政策の一環として位置づけられています。
失業保険の目的
失業保険制度には以下の3つの主要な目的があります。
- 失業者の生活安定
- 求職活動の支援
- 労働力の適正配置
失業保険の受給条件
失業保険を受給するためには、複数の条件を満たす必要があります。ここでは、受給に必要な基本的な条件から、2025年4月の制度改正による変更点まで詳しく解説します。
基本的な受給条件
失業保険を受給するための基本条件は以下の通りです。
雇用保険への加入期間
離職日以前の2年間に12カ月以上(特定の条件に当てはまる場合は1年間に6カ月以上)、雇用保険に加入していたことが必要です。
一般の離職者の場合
- 離職日以前2年間に被保険者期間が12カ月以上
特定受給資格者・特定理由離職者の場合
- 離職日以前1年間に被保険者期間が6カ月以上
失業の状態にあること
失業保険を受給するためには、以下の4つの条件すべてを満たしている必要があります。
- 就職の能力があること
- 就職の意思があること
- 求職活動を行っていること
- 失業の状態にあること
特定受給資格者・特定理由離職者とは
受給条件が緩和される特定受給資格者と特定理由離職者について説明します。
特定受給資格者の条件
以下のいずれかに該当する場合、特定受給資格者として認定されます。
- 会社の倒産により離職した者
- 事業主から解雇された者(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く)
- 労働契約の更新がなされなかった者
- 事業所の移転により通勤困難となった者
- 賃金の3分の1を超える額が未払いとなった者
特定理由離職者の条件
以下の理由により離職した場合、特定理由離職者として認定されます。
- 病気、負傷、妊娠、出産、育児等により離職した者
- 家族の介護等により離職した者
- 結婚に伴う住所変更により離職した者
- 配偶者の転勤に伴い離職した者
失業保険の給付額と計算方法
失業保険の給付額は、退職前の賃金や年齢によって決定されます。給付額の計算方法を詳しく解説します。
基本手当日額の計算方法
基本手当日額は、退職前6カ月間の賃金(ボーナスを除く)の総額を180で割った「賃金日額」に、およそ50~80%の給付率を掛けた金額です。
Step1:賃金日額の計算
賃金日額 = 退職前6カ月の賃金合計 ÷ 180日
計算例
- 月給30万円の場合:30万円 × 6カ月 ÷ 180日 = 1万円
Step2:基本手当日額の計算
基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率
2025年最新の給付率一覧
給付率は離職時の年齢と退職前の賃金によって異なり、金額が低い方ほど給付率は高くなります。
30歳未満の場合
- 賃金日額2,746円以下:80%
- 賃金日額2,747円~5,110円:80%~50%
- 賃金日額5,111円~12,580円:50%
- 賃金日額12,581円以上:上限額適用
30歳以上45歳未満の場合
- 賃金日額2,746円以下:80%
- 賃金日額2,747円~5,110円:80%~50%
- 賃金日額5,111円~12,580円:50%
- 賃金日額12,581円以上:上限額適用
45歳以上60歳未満の場合
- 賃金日額2,746円以下:80%
- 賃金日額2,747円~5,110円:80%~50%
- 賃金日額5,111円~12,580円:50%
- 賃金日額12,581円以上:上限額適用
60歳以上65歳未満の場合
- 賃金日額2,746円以下:80%
- 賃金日額2,747円~5,110円:80%~45%
- 賃金日額5,111円~11,090円:45%
- 賃金日額11,091円以上:上限額適用
基本手当日額の上限と下限
2025年1月現在、基本手当日額の上限は6,945~7,294円となっています。また、基本手当日の下限は、年齢に関係なく2,196円です。
年齢別上限額(2025年度)
- 30歳未満:6,945円
- 30歳以上45歳未満:7,730円
- 45歳以上60歳未満:8,490円
- 60歳以上65歳未満:7,294円
失業保険の給付日数
失業保険の給付日数は、離職理由、年齢、雇用保険加入期間によって決定されます。
一般の受給資格者の給付日数
雇用保険加入期間別給付日数
- 10年未満:90日
- 10年以上20年未満:120日
- 20年以上:150日
特定受給資格者・特定理由離職者の給付日数
特定受給資格者と特定理由離職者は、年齢と雇用保険加入期間に応じて給付日数が優遇されます。
30歳未満の場合
- 1年未満:90日
- 1年以上5年未満:90日
- 5年以上10年未満:120日
- 10年以上20年未満:180日
30歳以上35歳未満の場合
- 1年未満:90日
- 1年以上5年未満:120日
- 5年以上10年未満:180日
- 10年以上20年未満:210日
- 20年以上:240日
35歳以上45歳未満の場合
- 1年未満:90日
- 1年以上5年未満:150日
- 5年以上10年未満:180日
- 10年以上20年未満:240日
- 20年以上:270日
45歳以上60歳未満の場合
- 1年未満:90日
- 1年以上5年未満:180日
- 5年以上10年未満:240日
- 10年以上20年未満:270日
- 20年以上:330日
60歳以上65歳未満の場合
- 1年未満:90日
- 1年以上5年未満:150日
- 5年以上10年未満:180日
- 10年以上20年未満:210日
- 20年以上:240日
2025年4月からの制度改正内容
2025年4月から失業保険制度に重要な変更が実施されました。これらの改正により、失業者により手厚い支援が提供されるようになりました。
給付制限期間の短縮
退職日が令和7年4月1日以降である場合は原則1か月、同年3月31日以前である場合は原則2か月となります。
改正前(2025年3月31日まで)
- 自己都合退職:2カ月間の給付制限
- 重責解雇:3カ月間の給付制限
改正後(2025年4月1日以降)
- 自己都合退職:1カ月間の給付制限
- 重責解雇:3カ月間の給付制限(変更なし)
教育訓練による給付制限解除の拡充
2025年4月からは自主的な教育訓練でも同様の効果が得られるようになったことが大きな変更点です。
従来はハローワークが指示する職業訓練のみが給付制限解除の対象でしたが、新制度では以下も対象となります。
- 教育訓練給付の対象講座
- 厚生労働省令で定める訓練
高年齢雇用継続給付の見直し
2025年4月からは、高年齢雇用継続給付の支給率が下がります。賃金の低下率が64%以下の場合に、大で毎月の賃金額の10%の給付金が支給されるように変わるため、受取れる金額が減ります。
さらに、2030年4月以降は高年齢雇用継続給付の制度そのものが廃止される予定です。
失業保険の手続き方法
失業保険を受給するためには、適切な手続きを踏む必要があります。ここでは、手続きの流れから必要書類まで詳しく解説します。
手続きの基本的な流れ
失業保険の手続きは以下の順序で行います。
- 離職票の受領
- ハローワークでの求職申込み
- 受給資格決定
- 雇用保険説明会への参加
- 失業認定
- 基本手当の受給
Step1:離職票の準備
退職後、会社から以下の書類を受け取ります。
- 雇用保険被保険者離職票-1
- 雇用保険被保険者離職票-2
離職票は退職日から10日以内に会社から交付されるのが一般的です。
Step2:ハローワークでの手続き
必要書類の準備
ハローワークで手続きを行う際は、以下の書類が必要です。
- 雇用保険被保険者離職票(-1、-2)
- マイナンバーカード(または通知カード+身分証明書)
- 印鑑
- 写真2枚(最近のもの、正面上半身、縦3.0cm×横2.4cm)
- 普通預金通帳(本人名義)
求職申込み
ハローワークの窓口で以下の手続きを行います。
- 求職申込書の記入・提出
- 離職票の提出
- 受給資格の確認
Step3:受給資格決定
ハローワークで受給資格が決定されると、以下が交付されます。
- 雇用保険受給資格者証
- 失業認定申告書
Step4:雇用保険説明会への参加
受給資格決定後、指定された日時に雇用保険説明会に参加します。説明会では以下について説明されます。
- 失業認定の手続き方法
- 求職活動の要件
- 不正受給の防止について
Step5:失業認定
4週間に1回、指定された認定日にハローワークで失業認定を受けます。失業認定では以下を確認されます。
- 失業の状態にあること
- 求職活動の実績
- 就職または就労の有無
Step6:基本手当の受給
失業認定を受けた後、指定した口座に基本手当が振り込まれます。振込は認定日から通常5営業日以内に行われます。
求職活動実績の作り方
失業保険を継続して受給するためには、求職活動実績が必要です。認定期間中に最低2回以上の求職活動を行う必要があります。
求職活動として認められる活動
以下の活動が求職活動実績として認められます。
職業相談・職業紹介
- ハローワークでの職業相談
- ハローワークでの職業紹介
- 民間の職業紹介事業者への相談
応募・面接
- 求人への応募
- 面接の受験
- 書類選考への参加
各種セミナー・講習
- ハローワーク主催の就職セミナー
- 再就職支援会社のセミナー
- 職業訓練の見学・相談
資格試験・検定
- 再就職に資する資格試験の受験
- 職業に関する検定の受験
求職活動実績の記録方法
求職活動を行った場合は、以下の情報を記録しておきましょう。
- 活動日時
- 活動場所(事業所名など)
- 活動内容の詳細
- 担当者名(分かる場合)
失業保険受給中の注意事項
失業保険を受給中は、いくつかの注意事項があります。これらを理解せずに行動すると、給付が停止される場合があります。
就労・収入に関する注意事項
アルバイト・パートの制限
失業保険受給中にアルバイトやパートを行う場合は、以下の制限があります。
- 1週間の労働時間が20時間未満
- 31日以上の雇用見込みがない
- 1日の労働時間が4時間以上の場合は失業認定日に申告が必要
収入の申告義務
受給期間中に得た収入は、すべて失業認定時に申告する必要があります。申告対象となる収入は以下の通りです。
- アルバイト・パートの賃金
- 内職の報酬
- 原稿料、講演料等の雑所得
- 年金などの公的給付
求職活動に関する義務
就職の意思と能力
失業保険を受給するためには、常に就職の意思と能力を維持する必要があります。以下の状態の場合は受給できません。
- 病気やけがで就職できない状態
- 妊娠、出産、育児のため就職できない状態
- 学業に専念するため就職できない状態
職業紹介への応諾義務
ハローワークから適当な職業を紹介された場合、正当な理由なく拒否することはできません。
不正受給の防止
不正受給が発覚した場合、以下のペナルティが科せられます。
- 支給停止
- 返還命令(受給額全額)
- 納付命令(受給額の2倍相当額)
- 刑事告発の可能性
失業保険の申請タイミング
失業保険の申請タイミングは、受給額と受給期間に大きく影響します。最適な申請タイミングについて解説します。
退職直後の申請が原則
失業保険は退職後できるだけ早く申請することが重要です。その理由は以下の通りです。
受給期間の制限
失業保険の受給期間は、離職日の翌日から1年間(給付日数が330日の場合は1年と30日、360日の場合は1年と60日)と定められています。
給付制限期間の開始
自己都合退職の場合、申請が遅れるとその分給付制限期間の開始も遅れ、実際の受給開始時期がさらに後ろ倒しになります。
特別な事情がある場合の申請延長
以下の理由により、すぐに求職活動ができない場合は、受給期間の延長申請が可能です。
延長が認められる理由
- 病気、けが
- 妊娠、出産、育児(3歳未満)
- 親族の介護
- 配偶者の海外赴任への同行
延長申請の手続き
延長申請は以下の手順で行います。
- 離職日の翌日から30日経過後に申請
- ハローワークで「受給期間延長申請書」を提出
- 延長理由を証明する書類の提出
申請タイミングの最適化
申請タイミングを最適化するためのポイントをまとめます。
退職前の準備
- 離職票の交付時期を会社に確認
- 必要書類の準備
- 最寄りのハローワークの場所・営業時間の確認
退職直後の行動
- 離職票受領後、速やかにハローワークで手続き
- 求職申込みと同時に受給資格決定の申請
失業保険と他の給付制度との関係
失業保険と同時に受給できる制度、できない制度について解説します。
同時受給可能な制度
以下の制度は失業保険と同時に受給することができます。
住居確保給付金
離職により住宅を失った場合や失うおそれがある場合に、家賃相当額を支給する制度です。
生活福祉資金貸付制度
低所得世帯等に対して、生活費や一時的な資金を無利子または低利で貸し付ける制度です。
同時受給できない制度
以下の制度は失業保険と同時に受給することができません。
老齢厚生年金・老齢基礎年金
65歳未満の方が老齢厚生年金を受給している場合、失業保険と老齢厚生年金の併給調整が行われます。
障害年金
障害年金受給者が失業保険を受給する場合、年金額に応じて失業保険の減額または支給停止があります。
健康保険の取り扱い
失業保険受給中の健康保険について説明します。
国民健康保険への加入
退職後は国民健康保険に加入する必要があります。失業保険受給中も保険料の支払い義務があります。
保険料の軽減措置
前年所得が一定額以下の場合、国民健康保険料の軽減措置を受けられる場合があります。
よくある質問と回答
失業保険に関してよく寄せられる質問と回答をまとめました。
Q1:アルバイトをしながら失業保険は受給できますか。
A1:条件を満たせば受給可能です。1週間の労働時間が20時間未満で、31日以上の雇用見込みがない場合、アルバイトをしながら失業保険を受給できます。ただし、1日4時間以上働いた日は「就職した日」として扱われ、その日の分の基本手当は支給されません。
Q2:会社都合退職と自己都合退職で受給条件は変わりますか。
A2:大きく変わります。会社都合退職(特定受給資格者)の場合、雇用保険加入期間6カ月以上で受給でき、給付制限もありません。自己都合退職の場合は、加入期間12カ月以上が必要で、2025年4月からは1カ月間の給付制限があります。
Q3:失業保険受給中に結婚した場合、手続きは必要ですか。
A3:必要です。氏名変更の手続きをハローワークで行ってください。また、配偶者の扶養に入る場合は、失業保険の受給を継続するか検討が必要です。扶養に入ると求職活動の義務がなくなるため、失業保険の受給資格を失う可能性があります。
Q4:受給期間中に病気になった場合はどうなりますか。
A4:医師から就労不可の診断を受けた場合、失業保険の受給は停止されます。ただし、受給期間の延長申請を行うことで、回復後に残りの給付日数を受給できます。延長期間は最大3年間です。
Q5:転職先が決まった場合、失業保険はどうなりますか。
A5:就職が決まった場合、失業保険の受給は終了します。ただし、条件を満たせば再就職手当や就業促進定着手当などの就業促進給付を受けられる場合があります。これらの給付により、早期の再就職が経済的に有利になる場合があります。
Q6:海外で求職活動をする場合、失業保険は受給できますか。
A6:原則として受給できません。失業保険は日本国内での求職活動を前提とした制度です。海外転居の場合は受給資格を失います。ただし、短期間の海外旅行程度であれば、事前にハローワークに相談することで対応方法を検討できます。
まとめ
失業保険の受給条件は、雇用保険への加入期間と失業状態にあることが基本となります。2025年4月からの制度改正により、自己都合退職の給付制限期間が1カ月に短縮され、より利用しやすい制度となりました。
受給を検討される方は、以下のポイントを押さえて適切な手続きを行ってください。
受給成功のポイント:
- 退職後速やかな申請手続き
- 必要書類の事前準備
- 継続的な求職活動の実施
- 収入や就労状況の正確な申告
- 認定日の厳守
失業保険は労働者の権利です。適切な知識を持って制度を活用し、安心して次のキャリアステップを踏み出してください。制度の詳細や個別の相談については、お住まいの地域のハローワークまでお問い合わせください。

