「めまい」の原因は?危険なめまいと良性めまいの見分け方

めまいは日常生活で多くの人が経験する症状です。しかし、その中には命に関わる危険なものから、良性で治療しやすいものまで様々な種類が存在します。適切な判断と対処により、深刻な事態を避けることができるでしょう。
めまいは患者さんが訴える症状の中でもとても多い症状です。めまいの原因は多岐にわたり、軽いものから重いものまで様々なものがあります。この記事では、めまいの原因から危険性の見分け方、対処法まで専門的に解説していきます。
めまいの基本的な仕組みと分類
めまいが起こる仕組み
めまいは、体のバランスを保つ機能に異常が生じることで発生します。人間の平衡感覚は、以下の3つのシステムが協調して働くことで維持されています。
- 内耳の前庭系(三半規管・耳石器)
- 視覚系(目から得られる情報)
- 深部感覚系(筋肉や関節からの感覚)
これらのシステムのいずれかに問題が生じると、めまいが発生します。
めまいの基本的な種類
めまいは大きく以下の3つのタイプに分類されます。
回転性めまい(眩暈)
- 自分や周囲がぐるぐる回っているように感じる
- 最も典型的なめまいの症状
- 耳の病気で起こることが多い
浮動性めまい(ふらつき)
- ふわふわと浮いているような感覚
- ぐらぐらと不安定な感じ
- 脳の病気で起こることが多い
立ちくらみ
- 立ち上がった時に起こる
- 血圧の変化が主な原因
- 一時的な血流不足による症状
危険なめまいと良性めまいの見分け方
危険なめまいの特徴
危険なめまいの原因となる脳の病気で緊急に対応が必要なのは以下の疾患です。特に以下の症状が伴う場合は、直ちに医療機関を受診する必要があります。
脳血管障害(脳卒中)が原因のめまい
脳梗塞によるめまい 突如現れるめまいのうちの3~5%は脳出血や脳梗塞などの脳卒中を原因としています。
危険サイン:
- 突然の激しいめまい
- 意識レベルの低下
- ろれつが回らない
- 手足の麻痺やしびれ
- 歩行困難
- 激しい頭痛
- 物が二重に見える
脳出血によるめまい
- 突然の激しい頭痛とめまい
- 意識障害
- 嘔吐を繰り返す
- 血圧の急激な上昇
その他の危険なめまい
くも膜下出血
- 今まで経験したことのない激しい頭痛
- 首の痛みや硬直
- 意識障害
- 光をまぶしく感じる
脳腫瘍
- 徐々に強くなるめまい
- 継続的な頭痛
- 視野の異常
- 性格の変化
良性めまいの特徴
良性めまいは命に関わることは少なく、適切な治療で改善が期待できます。
良性発作性頭位めまい症(BPPV)
頭を動かしたときに、自分自身か周囲のものが動いたり回転したりしているかのような感覚が短時間(通常は1分未満)生じます。
特徴:
- 頭の位置を変えた時にめまいが起こる
- 持続時間は通常1分以内
- 寝返りや起床時に多発
- 耳の症状(難聴・耳鳴り)は伴わない
- 意識障害はなし
メニエール病
特徴:
- 回転性めまいが数時間持続
- 耳鳴りや難聴を伴う
- 耳の閉塞感
- 反復して発作が起こる
前庭神経炎
特徴:
- 数日間続く回転性めまい
- 聴力に異常なし
- 風邪症状の後に発症することが多い
緊急受診が必要な症状
以下の症状がある場合は、直ちに救急車を呼ぶか、緊急外来を受診してください。
即座に救急車を呼ぶべき症状
- 突然の激しい頭痛とめまい
- 意識がもうろうとする
- ろれつが回らない
- 手足に力が入らない
- 物が二重に見える
- 歩けない程のふらつき
できるだけ早く受診すべき症状
- めまいが数時間以上続く
- 発熱を伴うめまい
- 激しい頭痛
- 聴力の急激な低下
- 継続的な嘔吐
めまいの主な原因疾患
末梢性めまい(耳が原因)
良性発作性頭位めまい症
発生頻度:めまい全体の約40%を占める最も多い疾患
原因:耳石器から剥がれた耳石が三半規管に迷入することで発生
症状の特徴:
- 起床時や寝返り時のめまい
- 持続時間は30秒から1分程度
- 特定の頭位でめまいが誘発される
診断方法:
- Dix-Hallpike試験
- Side-lying試験
- 頭位眼振検査
治療法:
- エプリー法(耳石置換法)
- セモン法
- ブラント・ダロフ法
メニエール病
原因:内リンパ液の過剰により内耳の圧が上昇
症状:
- 回転性めまい(数時間持続)
- 波動性難聴
- 耳鳴り
- 耳閉塞感
診断基準:
- 2回以上の回転性めまい発作
- 聴力検査での感音難聴の確認
- 耳鳴りまたは耳閉塞感
治療:
- 利尿薬(イソソルビド)
- ステロイド薬
- 抗めまい薬
- 手術療法(重症例)
突発性難聴
症状:
- 突然の一側性難聴
- めまいを伴うことがある
- 耳鳴り
治療:
- ステロイド大量療法
- 高気圧酸素療法
- 早期治療が重要
中枢性めまい(脳が原因)
脳血管障害
小脳梗塞 激しい回転性めまいや歩けないほどのふらつきが突然起こり、それが長時間持続します。
症状:
- 突然発症の激しいめまい
- 歩行不能
- 構音障害
- 運動失調
脳幹梗塞
- 複視
- 嚥下障害
- 四肢の脱力
- 意識障害
診断:
- MRI検査が最も有効
- CT検査では早期発見が困難な場合あり
治療:
- 急性期血管内治療
- 抗血小板療法
- リハビリテーション
椎骨脳底動脈循環不全
原因:首から脳への血流不足
症状:
- 浮動性めまい
- 頭痛
- 視野欠損
- 複視
危険因子:
- 高血圧
- 糖尿病
- 動脈硬化
- 頚椎症
めまいの検査と診断
問診で重要なポイント
医師は以下の点を詳しく聞き取ります:
症状の詳細
- めまいの種類(回転性・浮動性・立ちくらみ)
- 発症様式(突然・徐々に)
- 持続時間
- 誘発因子
随伴症状
- 頭痛の有無
- 神経症状(麻痺・しびれ・構音障害)
- 聴覚症状(難聴・耳鳴り・耳閉感)
- 自律神経症状(嘔気・嘔吐・冷汗)
既往歴・内服薬
- 高血圧・糖尿病・心疾患
- 薬剤性めまいの可能性
身体診察
神経学的診察
- 眼振の観察
- 聴力検査
- 平衡機能検査
- 神経学的異常の有無
頭位変換試験
- Dix-Hallpike試験
- 仰臥位頭位変換眼振試験
- Side-lying試験
画像検査
MRI検査
- 脳血管障害の診断に必須
- 小脳・脳幹の病変を詳細に描出
- 急性期でも病変を検出可能
CT検査
- 脳出血の診断
- 救急外来での初期評価
血液検査
- 炎症反応
- 血糖値
- 甲状腺機能
- ビタミンB12値
聴力検査
純音聴力検査
- 難聴の程度と性質を評価
- メニエール病の診断に重要
温度眼振検査
- 前庭機能の評価
- 一側前庭機能低下の診断
めまいの治療法
急性期の対症療法
抗めまい薬
- ベタヒスチン(メリスロン)
- ジフェンヒドラミン(レスタミン)
- ジメンヒドリナート(ドラマミン)
制吐薬
- ドンペリドン(ナウゼリン)
- メトクロプラミド(プリンペラン)
安静と体位
- 症状を軽減する体位の保持
- 急激な頭位変換の回避
原因別の特異的治療
良性発作性頭位めまい症
理学療法
- エプリー法:後半規管型BPPVに有効
- セモン法:外側半規管型BPPVに適応
- ブラント・ダロフ法:自宅でも実施可能
成功率:
- エプリー法:約80-90%
- 複数回の治療で95%以上が改善
メニエール病
薬物療法
- 浸透圧利尿薬(イソソルビド)
- ステロイド薬
- 血管拡張薬
生活指導
- 塩分制限(6g/日以下)
- ストレス管理
- 規則正しい生活
手術療法(難治例)
- 内リンパ嚢開放術
- 前庭神経切断術
- 鼓室内ステロイド注入
脳血管障害
急性期治療
- 血栓溶解療法(t-PA)
- 血管内治療(血栓回収術)
- 抗血小板療法
慢性期治療
- 抗血小板薬継続
- 危険因子の管理
- リハビリテーション
リハビリテーション
前庭リハビリテーション
適応
- 一側前庭機能低下
- 中枢性めまい
- 慢性めまい
基本原理
- 前庭代償の促進
- 視覚・体性感覚の強化
- バランス能力の改善
具体的な方法
- 眼球運動訓練
- 頭位変換訓練
- バランス訓練
- 歩行訓練
在宅でのリハビリテーション
簡単な平衡訓練
- 片足立ち(目を開けて・閉じて)
- 歩行中の頭部回旋
- タンデム歩行
注意点
- 転倒に十分注意
- 段階的に負荷を上げる
- 継続が重要
めまいの予防法
生活習慣の改善
規則正しい生活
- 十分な睡眠時間の確保
- 規則的な食事
- 適度な運動
ストレス管理
- リラクゼーション法の実践
- 趣味や娯楽の時間確保
- 相談できる環境の整備
疾患別の予防法
良性発作性頭位めまい症の予防
頭位変換時の注意
- ゆっくりとした動作
- 急激な頭部の動きを避ける
- 起床時は段階的に体を起こす
メニエール病の予防
食事療法
- 塩分制限(1日6g以下)
- 水分の適量摂取
- カフェイン・アルコールの制限
ストレス対策
- 定期的な休息
- 音楽療法やアロマテラピー
脳血管障害の予防
生活習慣病の管理
- 血圧管理(収縮期血圧130mmHg以下)
- 血糖管理(HbA1c 7.0%以下)
- 脂質管理(LDL 120mg/dl以下)
禁煙・節酒
- 完全禁煙
- 適量飲酒(男性で日本酒1合以下)
定期的な運動
- 有酸素運動を週3回以上
- ウォーキング、水泳などの継続
年齢層別のめまい対策
小児のめまい
特徴
- 起立性調節障害が多い
- 心因性要素も考慮
- 成長期特有の問題
対応
- 生活リズムの改善
- 家族・学校との連携
- 心理的サポート
高齢者のめまい
特徴と注意点 お年寄りはめまいをおこしやすくなります。それは加齢によって、平衡感覚が衰えること、血圧を調節する能力が衰えることが理由です。
- 複数の原因が重複
- 転倒リスクが高い
- 薬剤性めまいの可能性
対策
- 転倒予防対策
- 服薬管理の徹底
- 定期的な健康チェック
- 環境整備
妊娠中のめまい
原因
- ホルモン変化
- 血圧変動
- 貧血
対応
- 産科との連携
- 安全性の高い薬剤選択
- 生活指導
めまいに関する最新の研究と治療
診断技術の進歩
新しい検査法
- 3D眼振解析システム
- 体重計を用いた重心動揺検査
- 携帯型前庭機能検査装置
画像診断の進歩
- 高解像度MRI
- 機能的MRI
- DTI(拡散テンソル画像)
治療法の進歩
理学療法の発展
- VR(バーチャルリアリティ)を用いた前庭リハビリ
- ロボット支援バランス訓練
- テレリハビリテーション
薬物療法の進歩
- 新規抗めまい薬の開発
- 個別化医療への取り組み
- 副作用軽減への工夫
めまいは多くの人が経験する一般的な症状ですが、その背景には軽度なものから生命に関わる重篤なものまで様々な疾患が隠れている可能性があります。
重要なポイント
危険なめまいの見分け方
- 突然発症の激しいめまい
- 神経症状の併発(麻痺・構音障害・意識障害)
- 激しい頭痛の合併
良性めまいの特徴
- 頭位変換時の短時間のめまい
- 耳症状の併発
- 反復性の発作
適切な対応
- 危険症状がある場合は即座に救急受診
- 継続するめまいは専門医への相談
- 予防的な生活習慣の改善
めまいを感じた際は、症状の特徴を正確に把握し、必要に応じて適切な医療機関を受診することが大切です。特に、神経症状を伴うめまいや突然発症の激しいめまいについては、迷わず救急医療機関での診察を受けるようにしましょう。
早期の適切な診断と治療により、多くのめまいは改善が期待できます。一人で悩まず、医療従事者と連携して症状の改善を目指していくことが重要です。
