2026冬季オリンピック女子シングルスケート フリースケート|日本勢滑走順・見どころ・メダル展望を徹底解説

2026冬季オリンピック(ミラノ・コルティナ大会)の女子シングルスケートフリースケートが、いよいよ現地時間2月19日に開催されます。

ショートプログラム(SP)では日本勢が上位を独占し、中井亜美が78.71点で首位、坂本花織が77.23点で2位、千葉百音が74.00点で4位と、歴史的な好発進を見せました。

フリースケーティング(FS)でメダルの色が決定するこの一戦は、日本フィギュアスケート史上初の「女子表彰台独占」という偉業が懸かっています。

本記事では、ショートプログラムの結果速報、フリーの滑走順と日本時間での開始予定、各選手のプログラム構成や得点分析、そしてメダル争いの展望まで、網羅的に解説します。フィギュアスケートファンのみならず、初めてこの競技を見る方にも分かりやすい内容を目指しています。

目次

2026冬季オリンピック 女子シングル スケート フリースケートの競技概要

ミラノ・コルティナ2026の会場と日程

ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックのフィギュアスケート競技は、イタリア・ミラノにある「ミラノ・アイススケーティングアリーナ」で開催されています。大会全体は2月6日から22日までの日程で行われ、フィギュアスケートは2月6日の団体戦から始まりました。

女子シングルのスケジュールは以下の通りです。

種目現地時間(CET)日本時間(JST)
ショートプログラム2月17日 18:30〜2月18日 2:30〜
フリースケーティング2月19日 19:00〜2月20日 3:00〜

フリースケーティングは、フィギュアスケート競技全体の最終種目として行われます。ショートプログラム上位24名がフリーに進出し、SP順位の低い選手から順に滑走します。

フリースケーティングのルールと採点方法

フリースケーティング(FS)は、女子の場合、演技時間が4分(プラスマイナス10秒)と定められています。ショートプログラムの2分50秒と比べて長く、選手の総合的な実力が問われる種目です。

採点は「技術点」(TES:テクニカルエレメントスコア)と「演技構成点」(PCS:プログラムコンポーネントスコア)の合計で行われます。技術点にはジャンプ、スピン、ステップシークエンスなどの基礎点と出来栄え点(GOE)が含まれます。演技構成点は「スケーティングスキル」「トランジション」「パフォーマンス」「コンポジション」「インタープリテーション」の5項目で評価されます。

ショートプログラムとフリースケーティングの合計得点が最終順位を決定します。そのため、SPでリードしていてもフリーで逆転される可能性は十分にあります。

ショートプログラムの結果速報と全順位

SP上位10名の得点詳細

2月17日に行われたショートプログラムでは、出場29選手による激しい首位争いが繰り広げられました。上位10名の結果は以下の通りです。

SP順位選手名国籍合計点技術点演技構成点
1位中井亜美日本78.7145.0233.69
2位坂本花織日本77.2340.0837.15
3位アリサ・リュウアメリカ76.5941.3435.25
4位千葉百音日本74.0038.7235.28
5位アデリア・ペトロシアンAIN72.8940.4432.45
6位アナスタシア・グバノワジョージア71.7738.2833.49
7位ロエナ・ヘンドリクスベルギー70.9336.9234.01
8位イザボー・レヴィトアメリカ70.8536.7734.07
9位イ・ヘイン韓国70.0737.6132.46
10位ニーナ・ペトロキナエストニア69.6336.8032.83

注目すべきは、ショートプログラムで70点を超えた選手が9人もいた点です。これは五輪の女子シングルとしては空前のハイレベルな争いと言えます。

日本勢3選手のSP演技振り返り

中井亜美は、冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を見事に成功させました。続くトリプルルッツ+トリプルトウループの連続ジャンプも確実に着氷し、自己ベストとなる78.71点を記録しています。使用曲はニーノ・ロータ作曲の映画音楽「道(La Strada)」で、イタリア映画の名作にちなんだ選曲がミラノの観客を大いに沸かせました。

坂本花織は、高さとスピードを兼ね備えたダブルアクセルで高い加点を得ました。トリプルフリップ+トリプルトウループの連続ジャンプでやや回転不足の判定がありましたが、出場選手中最高の演技構成点37.15点を獲得しています。今季限りでの引退を表明している坂本にとって、最後の五輪個人戦となるSPで見せた渾身の演技でした。

千葉百音は最終滑走という大きなプレッシャーの中で登場しました。冒頭のコンビネーションジャンプでわずかに着氷が詰まる場面があったものの、それ以外は安定した演技を披露し、74.00点で4位発進となりました。演技後には「こんなに楽しく滑れているということに感謝の気持ちでいっぱい」と語っています。

フリースケーティングの滑走順と日本選手の登場時間

全24選手の滑走グループ構成

フリースケーティングには、SPの上位24名が進出しました。SP25位以下の5名(マデリン・シーザス、ヴィクトリア・サフォノワ、メダ・ヴァリアコイテ、アレクサンドラ・ファイギン、クリステン・スパーズ)はフリーに進むことができませんでした。

24選手は4グループに分けられ、SP順位の低い選手から滑走します。最終第4グループ(SP上位6名)が最も注目度の高いグループです。

グループ滑走番号選手名国籍SP順位
第1G1ロリーヌ・シルドフランス24位
第1G2リヴィア・カイザースイス23位
第1G3マリア・セニュクイスラエル22位
第1G4キミー・レポンドスイス21位
第1G5張如陽中国20位
第1G6エカテリーナ・クラコワポーランド19位
第2G7ララ・ナキ・グットマンイタリア18位
第2G8オルガ・ミクティナオーストリア17位
第2G9ユリア・ザウタールーマニア16位
第2G10イーダ・カルフネンフィンランド15位
第2G11シン・ジア韓国14位
第2G12アンバー・グレンアメリカ13位
第3G13ソフィア・サモデルキナカザフスタン12位
第3G14ニーナ・ピンツァローネベルギー11位
第3G15ニーナ・ペトロキナエストニア10位
第3G16イ・ヘイン韓国9位
第3G17イザボー・レヴィトアメリカ8位
第3G18ロエナ・ヘンドリクスベルギー7位
第4G19アナスタシア・グバノワジョージア6位
第4G20アデリア・ペトロシアンAIN5位
第4G21千葉百音日本4位
第4G22アリサ・リュウアメリカ3位
第4G23坂本花織日本2位
第4G24中井亜美日本1位

日本勢3選手の登場予定時間

フリースケーティングは現地時間19日19時(日本時間20日3時)に開始予定です。最終第4グループは日本時間20日6時以降に登場する見込みです。

選手名滑走番号日本時間(目安)
千葉百音21番2月20日 6:24頃
坂本花織23番2月20日 6:40頃
中井亜美24番(最終滑走)2月20日 6:52頃

最終グループでは、千葉百音、アリサ・リュウ、坂本花織、中井亜美の順で日本勢3名が登場します。注目のメダル争いの決着は、日本時間の2月20日午前7時前にはつく見込みです。

テレビ・ネット中継の視聴方法

日本国内でのテレビ放送は、NHK Eテレが日本時間2月20日午前6時から最終グループの演技をライブ中継する予定です。それに先立ち、NHK BSでは午前3時の競技開始から放送を行います。また、NHKプラスでの同時ネット配信も実施されます。

加えて、TVerやgorin.jpでもライブ配信が予定されており、スマートフォンやタブレットからの視聴も可能です。フィギュアスケートの最終種目にふさわしい注目度の高い競技だけに、放送局も手厚い体制で臨んでいます。

金メダル最有力候補|中井亜美の強さと課題

シニアデビューイヤーでの五輪制覇はあるか

中井亜美は2008年生まれの17歳です。今季がシニアデビューシーズンという異例の若さで五輪の舞台に立っています。国際スケート連盟(ISU)が2022年にシニアの年齢制限を15歳から17歳に引き上げた影響で、中井は引き上げ後の新ルール下で五輪に出場する最年少選手の一人となりました。

SPでは、冒頭のトリプルアクセルを完璧に決めた技術力の高さが光りました。トリプルアクセルは女子選手にとって最高難度のジャンプの一つです。基礎点8.00点に加え、高い出来栄え点(GOE)を獲得し、技術点45.02は全選手中トップの数値でした。

フリーの使用曲は「What a Wonderful World(この素晴らしき世界)」で、振付は宮本賢二氏が担当しています。演技時間4分の中で、トリプルアクセルを含む複数の高難度ジャンプを予定しており、すべてを成功させれば高得点が期待できます。

フリーでの注目ポイント

中井のフリーにおける最大の武器は、やはりトリプルアクセルです。SPに続いてフリーでもクリーンに着氷すれば、技術点で他選手に大きなアドバンテージを築くことができます。

ただし課題もあります。シニアの国際大会の経験がまだ浅い中井にとって、五輪のフリーという最大の舞台でのメンタルコントロールが重要です。SPで首位に立ったことにより、「追われる立場」としてのプレッシャーも加わります。

中井自身はSP後のインタビューで、「ショートをすごくいい形で終えられたので、フリーも自信を持って挑みたい。この舞台を最後の最後まで楽しむ気持ちで頑張ります」と語っています。17歳らしい天真爛漫さと、大舞台を楽しむメンタリティが、フリーでも発揮されるかが注目ポイントです。

悲願の金メダルへ|坂本花織のラストダンス

世界選手権3連覇の実力者が挑む最後の五輪

坂本花織は25歳です。2022年の北京冬季オリンピックで銅メダルを獲得し、その後2022年から2024年にかけて世界選手権を3連覇した実績を持ちます。女子選手の世界選手権3連覇は1960年代以来の快挙であり、名実ともに世界のトップスケーターとして君臨してきました。

今季での現役引退を表明しているため、今回のミラノ・コルティナ大会が最後のオリンピックとなります。団体戦の女子フリーでは148.62点で1位を獲得し、日本チームの銀メダル獲得に貢献しました。個人戦のSPでは77.23点で2位と、金メダル争いに十分な位置につけています。

演技構成点の圧倒的な高さ

坂本の最大の強みは、全選手中最高の演技構成点を叩き出す表現力です。SP2位ながら演技構成点37.15はダントツの1位で、2位の千葉百音(35.28点)に約2点の差をつけています。

フリーでは演技時間が4分と長くなるため、この演技構成点の差はさらに広がる可能性があります。坂本が得意とする「高さとスピードを両立させたダイナミックなスケーティング」は、フリーでこそ真価を発揮するスタイルです。

団体戦のフリーでは148.62点という高得点をすでにマークしており、個人戦でもこのレベルの演技ができれば、中井との1.48点差は十分に逆転可能です。

逆転のシナリオ

坂本が金メダルを獲得するためのシナリオは明確です。まず、ジャンプでのミスを最小限に抑えること。坂本はトリプルアクセルをプログラムに組み込んでいないため、ジャンプの基礎点では中井に劣ります。しかし、すべてのジャンプをクリーンに着氷し、加えて圧倒的な演技構成点を獲得すれば、逆転は十分にあり得ます。

SPでのトリプルルッツのエッジ判定や連続ジャンプの回転不足など、細かなミスをフリーで修正できるかも鍵となります。坂本はSP後のインタビューで、「今日のことをしっかり反省しつつ、フリーでも自分らしい演技ができるように。最後の最後まで集中して頑張ります」と決意を述べています。

五輪初出場でメダルを狙う千葉百音

世界選手権銅メダリストの実力

千葉百音は20歳です。昨季(2024-25シーズン)の世界選手権で銅メダルを獲得し、今季から五輪代表に選出されました。SP74.00点での4位発進は、3位のアリサ・リュウとわずか2.59点差です。

千葉の持ち味は安定感のあるジャンプ技術と、音楽との一体感を生む表現力です。SPでは冒頭のコンビネーションジャンプでやや詰まる場面がありましたが、それ以外のスピンやステップシークエンスでは高い完成度を見せました。

フリーでの巻き返しに必要な要素

千葉がメダルを獲得するためには、フリーでノーミスの演技を実現することが不可欠です。SPでは3位との差が2.59点でしたが、フリーの配点はSPよりも大きいため、逆転の余地はあります。

今季のフリーのベストスコアは144点台とされ、これをクリーンに決められれば総合得点で218点前後が見込まれます。メダル争いのボーダーラインを超えるためには、演技全体を通じてミスのない滑りが求められます。

千葉はSP後に、「自分らしさ全開で、私のスケーティングをしっかりお見せしたい。ノーミスの演技を目指して頑張ります」と意気込みを語りました。五輪の最終グループという大舞台で、自身の力を存分に発揮できるかが勝負の分かれ目です。

日本勢の表彰台独占を阻む海外のライバルたち

アリサ・リュウ(アメリカ)SP3位・76.59点

昨季の世界選手権で坂本花織を抑えて優勝したアリサ・リュウ(20歳)は、SP76.59点で3位につけています。日本勢の表彰台独占を阻む最大のライバルと目されています。

リュウは中国系アメリカ人で、2019年に史上最年少(当時13歳)で全米チャンピオンとなった早熟の天才です。一時は競技を離れていましたが、復帰後は着実に実力を伸ばし、昨季の世界女王に輝きました。

SPでは演技後半のトリプルルッツ+トリプルループの連続ジャンプで回転不足判定を受けましたが、すべてのジャンプを着氷させています。フリーで回転不足を解消し、持ち前のダイナミックなジャンプを披露すれば、日本勢に割って入る可能性は十分です。

SP後のインタビューでは「I loved it.(大好きな演技でした)」と笑顔を見せており、リラックスした精神状態でフリーに臨めそうです。

アデリア・ペトロシアン(AIN)SP5位・72.89点

ロシア選手権3連覇中のアデリア・ペトロシアン(18歳)は、個人の中立選手(AIN:Individual Neutral Athlete)として出場しています。ISUは2022年のロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシア・ベラルーシ選手の国際大会出場を禁止していましたが、五輪には中立選手としての出場が認められました。

SPでは全体の2番滑走という早い出番ながら、ダブルアクセルを含むすべてのジャンプを着氷させ、72.89点をマークしました。注目すべきは、SPではトリプルアクセルも4回転ジャンプもプログラムに組み込んでいなかった点です。

ペトロシアンはロシア国内大会やオリンピック予選大会で4回転ジャンプを成功させた実績があります。フリーで4回転を投入するかどうかが最大の焦点であり、成功すれば技術点で大幅な上積みが見込まれます。読売新聞のインタビューでは「フリーで4回転を入れるかは秘密」と笑顔で語っており、不気味な存在です。

コーチは、ドーピング疑惑で物議を醸したエテリ・トゥトベリーゼ氏のチームからダニイル・グレイヘンガウス氏が帯同しています。エテリ陣営の緻密な戦略が、フリーでどう発揮されるかも見どころです。

アナスタシア・グバノワ(ジョージア)SP6位・71.77点

ジョージア代表のアナスタシア・グバノワ(23歳)はSP6位につけています。今大会の団体戦フリーでは140.17点を記録した実力者で、フリーで好演技を見せればメダル争いに加わる可能性があります。

ISUの公式リザルトによると、団体戦フリーでのグバノワの技術点は73.24と高水準でした。個人戦のフリーでもこのレベルの技術点を出せれば、SP上位の選手にプレッシャーを与えることは間違いありません。

アンバー・グレン(アメリカ)SP13位・67.39点

全米選手権3連覇中のアンバー・グレン(26歳)は、SPでトリプルアクセルを成功させたものの、演技後半のトリプルループが2回転になるミスが響き、13位に沈みました。ショートプログラムの規定では、要素が規定に満たない場合は0点となるため、このミスのダメージは大きいものでした。

しかしグレンは、フリーで全要素を揃えた場合の爆発力はトップクラスです。SPの出遅れからメダル圏内まで巻き返すことは難しい状況ですが、フリーのみの得点で会場を沸かせる可能性はあります。

今大会のフィギュアスケート日本勢の躍進

団体戦からの流れとチームの一体感

ミラノ・コルティナ2026では、フィギュアスケート日本代表が大会を通じて目覚ましい活躍を見せています。その流れが女子シングルにも好影響を与えていることは、選手たちのコメントからも明らかです。

まず団体戦では、日本チームが2大会連続の銀メダルを獲得しました。坂本花織は女子フリーで148.62点をマークして1位に貢献し、チーム全体の勢いを作りました。

続く男子シングルでは、鍵山優真が銀メダル、佐藤駿が銅メダルを獲得しています。特に佐藤はSP9位からフリーでの巻き返しで銅メダルに輝き、劇的な結果を残しました。

そして最大のハイライトとなったのが、ペアの三浦璃来・木原龍一組(通称「りくりゅう」)です。SPで5位と出遅れましたが、フリーで世界歴代最高得点の158.13点を叩き出し、逆転で金メダルを獲得しました。日本ペアとして五輪メダル獲得は史上初の快挙です。

仲間の活躍がもたらす相乗効果

坂本花織はSP後のインタビューで、りくりゅうの金メダルについて次のように語っています。「一番の刺激になったのは、やっぱりペアの”りくりゅう”の金メダルでした。不安や怖さもすごく感じていたんですけど、それでも諦めずにやれば、男子の二人やりくりゅうのようにメダルが取れるんだって、みんなが証明してくれた」

千葉百音も、「昨日もりくりゅうペアの演技を3人でテレビで見て、本当に感動しました。『明日から私たちの番だね』って話していたんです」とチームの絆を明かしています。

このように、日本勢の各種目での活躍が選手間のモチベーションを高め、好循環を生んでいます。女子シングルのフリーでも、この一体感が力を発揮する可能性は高いでしょう。

フリースケーティングの得点シミュレーションとメダル予想

各選手のフリーベストスコアと予想得点

メダル争いの展望を考えるうえで、各選手のフリーにおけるシーズンベストスコア(今季の国際大会での最高得点)は重要な指標となります。以下は主要選手のデータです。

選手名SP得点フリー今季ベスト合計予想レンジ
中井亜美78.71145点台220〜225点
坂本花織77.23148点台(団体戦)220〜226点
アリサ・リュウ76.59145点台218〜222点
千葉百音74.00144点台215〜219点
ペトロシアン72.89140点台(4回転なし)213〜220点超

この数字から読み取れるのは、中井と坂本のメダル争いが極めて拮抗しているという事実です。SPの1.48点差はフリーの中で容易に逆転できる差であり、当日のジャンプの成否が勝敗を直接左右します。

金メダル争い:中井 vs 坂本の構図

金メダル争いの中心は、SPトップの中井亜美とSP2位の坂本花織です。

中井の優位点は技術点の高さにあります。トリプルアクセルという武器を持ち、SPの技術点45.02は坂本の40.08を約5点上回りました。フリーでもトリプルアクセルを成功させれば、さらに差を広げることができます。

一方、坂本の優位点は演技構成点の圧倒的な高さです。SPでの37.15は全選手中1位であり、フリーではこの差がさらに拡大する傾向にあります。経験値の差も大きく、五輪2大会目の坂本は大舞台での安定感で上回ります。

勝敗の分かれ目は、「中井がトリプルアクセルを含む高難度ジャンプをどれだけ成功させるか」と、「坂本がミスなく演技を完遂し演技構成点で差を広げるか」にかかっています。

銅メダル争い:混戦模様

銅メダル争いはさらに混戦です。アリサ・リュウ(SP3位)、千葉百音(SP4位)、アデリア・ペトロシアン(SP5位)の三つ巴の展開が予想されます。

リュウと千葉の差は2.59点です。千葉がフリーでノーミスの演技を見せれば逆転は可能ですが、リュウもフリーでの爆発力を持っています。

ペトロシアンは、フリーで4回転ジャンプを投入するかどうかが最大の変数です。4回転を成功させた場合、技術点が大幅に上がり、SPの6点以上の差を一気に縮める可能性があります。ただしリスクも伴い、転倒すれば減点となるため、諸刃の剣でもあります。

フィギュアスケート女子の歴史と五輪での名場面

日本女子フィギュアの五輪メダルの歴史

日本女子フィギュアスケートの五輪での歴史は、輝かしい実績に彩られています。

大会選手名メダル
2006年 トリノ荒川静香金メダル
2010年 バンクーバー浅田真央銀メダル
2014年 ソチ浅田真央6位
2018年 平昌宮原知子4位
2022年 北京坂本花織銅メダル
2026年 ミラノ??

2006年のトリノ大会で荒川静香がアジア人として初めての金メダルを獲得して以来、日本女子フィギュアは世界をリードする存在であり続けています。

しかし、女子シングルで日本選手が複数のメダルを同時に獲得したことはまだありません。今回の大会では、日本勢3名がSP上位に揃って入ったことで、史上初の「表彰台独占」の可能性が現実味を帯びています。

年齢制限引き上げの影響

2022年、ISUはフィギュアスケートのシニア年齢制限を15歳から17歳に引き上げることを決定しました。この背景には、2022年北京五輪でのカミラ・ワリエワ(ロシア)のドーピング問題がありました。

この規則変更により、かつてのように10代前半の選手が五輪で活躍する時代は終わりを迎えたと考えられていました。しかし、今大会では17歳の中井亜美がSPで首位に立ち、年齢制限引き上げ後も若い選手が十分に戦えることを証明しました。

一方で、25歳の坂本花織が演技構成点で群を抜いているように、経験を積んだベテラン選手の表現力が以前にも増して評価される傾向も見られます。年齢制限の引き上げは、フィギュアスケートの競技としての成熟に寄与していると言えるでしょう。

フリースケーティングで注目すべき技術要素

トリプルアクセルと4回転ジャンプの価値

女子フリースケーティングにおいて、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)の基礎点は8.00点です。ダブルアクセル(2回転半)の基礎点3.30点と比較すると、2倍以上の点差があります。

今大会でトリプルアクセルをフリーに組み込む可能性がある選手は、中井亜美とアンバー・グレンです。SPでトリプルアクセルを成功させた中井は、フリーでも同じジャンプを予定しています。成功すれば、他のトップ選手に対して大きなアドバンテージとなります。

4回転ジャンプについては、ペトロシアンが注目されています。4回転トウループの基礎点は9.50点、4回転サルコウは9.70点であり、フリーで成功させれば技術点を大幅に引き上げることが可能です。ペトロシアンが4回転を投入するかどうかは、フリー直前の6分間練習で明らかになるでしょう。

演技後半のジャンプボーナス

フィギュアスケートのルールでは、フリースケーティングの演技時間後半(後ろの2分)に実施したジャンプには、基礎点に10%のボーナスが加算されます。

坂本花織はこの後半ボーナスを戦略的に活用する選手として知られています。体力を要する演技後半に高難度のジャンプを配置し、ボーナスを含めた高い技術点を稼ぐスタイルは、経験と体力の両方が求められます。

中井も演技後半にジャンプを配置する構成を予定していますが、17歳ながら4分間の演技を通じてスタミナを維持できるかが重要です。シニアのフリープログラムを国際大会で滑った経験がまだ限られているだけに、後半の体力管理が勝負を分ける要因となり得ます。

スピンとステップシークエンスの重要性

フリースケーティングでは、ジャンプだけでなくスピンとステップシークエンスも重要な得点源となります。レベル4(最高レベル)を獲得した上で高い出来栄え点(GOE)を得られれば、数点単位で得点を上積みできます。

坂本花織はスピンとステップの両方で常に高いレベル認定を受けており、この安定感が演技構成点の高さにもつながっています。中井亜美もSPでのフライングシットスピンでレベル4を獲得するなど、ジャンプ以外の要素でも確かな実力を示しています。

五輪のフィギュアスケートを100倍楽しむ観戦ポイント

採点を理解するための基礎知識

フィギュアスケートの採点システムは一見複雑ですが、基本を押さえれば演技の見方が大きく変わります。

まず「技術点」は、各要素の基礎点と出来栄え点の合計です。ジャンプで転倒すれば減点となり、クリーンに着氷すれば加点されます。難しいジャンプほど基礎点が高く、成功すれば大きな得点源となります。

次に「演技構成点」は、スケーティングの質や表現力を評価する点数です。10点満点の5項目で審判が評価し、その合計が演技構成点となります。ベテラン選手やスケーティングスキルの高い選手が有利とされています。

最後に「減点」があります。転倒1回につき1点の減点が課され、タイムオーバーや要素不足でも減点が発生します。フリーでは特に演技後半の疲労からミスが出やすいため、最後まで集中力を保てるかが鍵です。

演技中に注目すべきポイント

ジャンプの着氷の瞬間は最もわかりやすい見どころです。片足でスムーズに着氷できているか、両足着氷や回転不足がないかを確認しましょう。

演技構成点に関わるポイントとしては、スケートの刃がどれだけ深く氷に乗っているか、曲の盛り上がりと動きが合っているか、演技全体にストーリー性があるかなどが挙げられます。

坂本花織の演技を見る際は、ジャンプの高さと滞空時間に注目してください。坂本のジャンプは、他の選手と比較して明らかに高く飛び上がるのが特徴です。この「高さ」が出来栄え点の加点につながっています。

中井亜美の演技では、トリプルアクセルの着氷の瞬間が最大のハイライトです。助走からテイクオフ、空中での3回転半、そして着氷までの一連の動きは、成功すれば会場全体が歓声に包まれる瞬間です。

ミラノ・コルティナ2026のフィギュアスケート全種目の結果

各種目の金メダリスト一覧

フリースケーティングを迎える前に、今大会のフィギュアスケート他種目の結果をまとめておきます。

種目金メダル銀メダル銅メダル
団体アメリカ日本カナダ
男子シングルミハイル・シャイドロフ(カザフスタン)鍵山優真(日本)佐藤駿(日本)
ペア三浦璃来/木原龍一(日本)
アイスダンス
女子シングルフリー後に決定フリー後に決定フリー後に決定

男子シングルでは、世界選手権2連覇中で優勝候補のイリア・マリニン(アメリカ)がフリーで2度の転倒を含むミスが相次ぎ、8位に終わるという波乱がありました。カザフスタンのミハイル・シャイドロフが金メダルを獲得し、鍵山優真が銀、佐藤駿が銅という結果でした。

ペアでは、三浦璃来・木原龍一組がSP5位から逆転し、フリーで世界歴代最高の158.13点を記録して金メダルに輝きました。日本のペアが五輪でメダルを獲得するのは史上初という歴史的快挙です。

男子シングルの波乱が示唆するもの

男子シングルで見られた波乱は、女子シングルのフリーにも示唆を与えています。優勝候補のマリニンがフリーで崩れたように、五輪のフリーではメンタル面のプレッシャーが演技に大きな影響を及ぼします。

SPで首位の選手がそのまま金メダルを獲得するとは限りません。男子では、SPで首位のマリニンがフリーで8位に沈み、SP2位だったシャイドロフが逆転優勝を果たしました。

この事例は、女子のフリーでも同様のドラマが起こり得ることを示しています。SPで首位の中井亜美にとっては「追われる緊張感」との戦いがあり、2位の坂本花織にとっては「追いかける集中力」が鍵となります。

【2026ミラノ五輪】女子フィギュアスケートフリー|結果速報・メダル予想・全選手の滑走順と見どころを徹底解説

2026冬季オリンピック(ミラノ・コルティナ大会)の女子フィギュアスケートフリーが、いよいよ現地時間2月19日に開催されます。ショートプログラム(SP)では中井亜美が78.71点で首位、坂本花織が77.23点で2位、千葉百音が74.00点で4位と、日本勢が歴史的な好発進を見せました。

既存の競技概要やSP結果に加え、フリースケーティングで勝敗を分ける採点のメカニズム、各選手のジャンプ構成予定と得点予測、そして初めてフィギュアスケートを観戦する方にも役立つ観戦ポイントまで、徹底的に解説します。

女子フィギュアスケートフリーの採点を深く理解する

フリースケーティングの結果を読み解くには、採点システムの仕組みを正確に把握することが欠かせません。ここでは、SPとフリーの配点の違い、得点構造の詳細を解説します。

技術点(TES)の構成要素と配点

技術点は、選手が演技中に実行する各要素(エレメンツ)に対して与えられます。フリースケーティングでは、SPよりも多くの要素が組み込まれるため、技術点の比重が大きくなります。

フリーで実行するジャンプの本数はSPの3本に対し7本です。さらにスピンは3回、ステップシークエンスとコレオグラフィックシークエンスが各1回で、合計12の要素が評価対象となります。

各要素には「基礎点」が設定されており、演技の出来栄えに応じて「GOE(Grade of Execution)」がプラスまたはマイナスされます。GOEは-5から+5の11段階で評価され、基礎点に対する一定の割合で加減算されます。

要素SPでの本数フリーでの本数
ジャンプ3本7本
スピン3回3回
ステップシークエンス1回1回
コレオシークエンスなし1回

フリーでは演技後半(プログラムの最後の2分間)に実行したジャンプの基礎点が1.1倍になるボーナスが付きます。このため、多くの選手が高難度のジャンプを後半に配置する戦略を採用しています。

演技構成点(PCS)の係数がフリーで勝敗を左右する

フリーの結果を大きく左右するのが「演技構成点の係数」です。現行ルール(2024-25シーズン改正後)では、演技構成点は「スケーティングスキル」「コンポジション」「プレゼンテーション」の3項目で採点されます。

この3項目の合計に対し、SPとフリーで異なる係数がかけられます。

種目演技構成点の係数
女子SP1.33倍
女子フリー2.67倍

係数がSPの約2倍になる点が極めて重要です。SPで坂本花織が中井亜美を演技構成点で3.46点上回りましたが、フリーでは係数の拡大により、その差がさらに広がる可能性があります。

仮にフリーでも同じ3項目の評価差(各項目で約1.15点差)があった場合、係数をかけた後の演技構成点の差は約6.9点にまで拡大します。この差は中井がトリプルアクセル1本を成功させて得られるGOE込みの加点(約10〜12点)の大部分を相殺する規模です。

減点(ディダクション)のリスクと影響

フリーで最も避けたいのが転倒です。転倒1回につき減点1点が課されます。さらに転倒した要素のGOEが大幅にマイナスとなるため、実質的なダメージは約3〜5点に及びます。

その他の減点対象には、演技時間の超過(10秒超過ごとに1点減点)、要素の制限違反(余分なジャンプを跳んだ場合は0点扱い)、衣装の落下(1点減点)などがあります。

今大会の金メダル争いでは、SP1位の中井と2位の坂本の差がわずか1.48点です。転倒1回で逆転が起きうる僅差であり、ジャンプの成否が直接的に順位を決める展開となります。

フリーで各選手が予定するジャンプ構成の詳細分析

フリースケーティングでは7本のジャンプが認められています。そのうちコンビネーションジャンプ(連続ジャンプ)は最大3回まで実行可能です。各選手がどのようなジャンプ構成を予定しているかは、勝敗予測に直結します。

中井亜美のフリーのジャンプ構成

中井亜美のフリーにおける最大の武器は、冒頭に予定されているトリプルアクセル(3A)です。基礎点は8.00点と、女子選手が跳ぶジャンプの中では最高レベルです。

中井はSPでもトリプルアクセルをクリーンに着氷させ、GOE込みで約10点を獲得しました。フリーでも同様に成功させれば、他選手に対し大きなアドバンテージとなります。

150cmという小柄な体格の中井は、ジャンプの高さよりもスピードとキレで回転を稼ぐタイプです。踏み切り直前の加速力が特徴的で、回転速度の速さが安定した着氷を支えています。

今季のフリーの自己ベストは149.08点です。この得点を基準にすると、SPの78.71点と合わせて合計227.79点が見込まれます。ノーミスであれば225点前後の高得点が期待できるでしょう。

坂本花織のフリーのジャンプ構成

坂本花織はトリプルアクセルをプログラムに組み込んでいません。そのかわり、すべてのジャンプで高いGOEを獲得する「確実性」が持ち味です。

坂本のジャンプの特徴は「高さ」と「幅」です。テレビ画面越しにも分かるほどの大きなジャンプは、ジャッジから高い評価を受けます。GOEで+3以上を安定して獲得できるため、基礎点の差をGOEで補う戦略が成立しています。

団体戦のフリーでは148.62点を記録しており、今季の自己ベストは150.13点です。SP77.23点と合計すると227.36点に達します。中井との合計予想がほぼ同水準であることが、この勝負の拮抗ぶりを物語っています。

フリーでは演技構成点の係数が2.67倍に拡大するため、坂本にとっては「ジャンプでミスさえしなければ、表現力で上回れる」という構図になります。

千葉百音のフリーのジャンプ構成

千葉百音も坂本と同様にトリプルアクセルは予定していません。ジャンプ構成の難度は中井や坂本とほぼ同等で、安定した着氷を武器にしています。

千葉の今季フリーの自己ベストは144.94点です。SP74.00点と合算すると218.94点となります。メダル争いのボーダーラインとなる220点付近に到達するには、自己ベストを更新する演技が求められます。

千葉は最終グループで千葉→リュウ→坂本→中井の順に滑走します。最終グループの先頭という出番は、後続の有力選手にプレッシャーを与える絶好の位置です。ノーミスの演技で高得点を叩き出せば、坂本や中井にも心理的な影響を与えるでしょう。

アリサ・リュウのフリーのジャンプ構成

SP3位のアリサ・リュウ(アメリカ)は、ダイナミックなジャンプが最大の武器です。今季のフリー自己ベストは146.70点で、SP76.59点と合わせれば223.29点が見込まれます。

SPではトリプルルッツ+トリプルループの連続ジャンプで回転不足判定を受けました。フリーでこの回転不足を解消できれば、技術点の上積みが可能です。

リュウは千葉の次、坂本の前に滑走します。日本勢の表彰台独占を阻む最大の壁と言える存在です。

ペトロシアンの4回転問題が最大の変数

SP5位のアデリア・ペトロシアン(AIN)のフリーのジャンプ構成が、今大会最大の不確定要素です。

事前に提出されたプログラム構成表には4回転ジャンプが含まれていないとの報道がありました。しかし公式練習では4回転トーループを複数回着氷させており、直前変更の可能性は残されています。

ロシアの元五輪金メダリスト・プルシェンコ氏は「4回転を2本跳ぶべきだ」と主張しています。一方、ペトロシアン陣営は「戦略は秘密」として明言を避けています。

4回転トーループの基礎点は9.70点です。3回転トーループ(基礎点4.20点)と比較すると、成功時の差は約5.50点になります。GOEの差も加味すれば、1本の4回転成功で約7〜8点の上積みが見込まれます。

ただし4回転で転倒した場合、基礎点の減少に加えGOEのマイナスと転倒減点で、3回転を成功させた場合と比較して約8〜10点の損失となります。ハイリスク・ハイリターンの選択です。

シナリオ予想技術点の変動合計への影響
4回転なし・ノーミス基準値SP72.89+フリー140点台=213点台
4回転1本成功+約7点SP72.89+フリー147点台=220点台
4回転2本成功+約14点SP72.89+フリー154点台=227点台
4回転1本転倒−約3点SP72.89+フリー137点台=210点台

2本成功の場合、金メダル争いにも絡む得点に達する可能性があります。まさに「台風の目」と呼ぶにふさわしい存在です。

金メダル争いの数値シミュレーション

SP上位2名の中井亜美と坂本花織による金メダル争いを、より具体的な数値で検証します。

技術点対決の構図

中井の技術点の優位性は明確です。トリプルアクセルの有無が最大の差となります。

SPの技術点は中井45.02点、坂本40.08点と約5点の差がありました。フリーではジャンプの本数がSPの3本から7本に増えるため、ジャンプ1本ごとの差が累積します。

中井がトリプルアクセルを含む7本のジャンプをすべてクリーンに着氷した場合、フリーの技術点は80点台後半が見込まれます。坂本がノーミスで滑った場合の技術点は75点台前半が想定されます。

技術点の差は約10〜13点程度に広がる可能性があります。この差を坂本が演技構成点で逆転できるかどうかが焦点です。

演技構成点対決の構図

坂本の演技構成点の優位性も同様に明確です。SPでは37.15対33.69で3.46点の差がありました。

フリーでは係数が2.67倍に拡大します。仮にジャッジが各項目でSPと同じ評価差をつけた場合、フリーの演技構成点の差は約6.9点に拡大します。

坂本のフリーでの演技構成点は、団体戦の実績(75.69点)を踏まえると、74〜76点台が見込まれます。中井の演技構成点は67〜69点台と予想されます。

総合予想得点の比較

すべての条件を総合した予想シミュレーションは以下の通りです。

選手SP得点フリー予想(ノーミス時)合計予想
中井亜美78.71147〜151点226〜230点
坂本花織77.23148〜152点225〜229点
アリサ・リュウ76.59144〜148点221〜225点
千葉百音74.00143〜147点217〜221点
ペトロシアン72.89140〜155点213〜228点

注目すべきは、中井と坂本の予想得点レンジがほぼ重複している点です。両者ともにノーミスの場合、1〜2点の僅差での決着が予想されます。どちらかにジャンプミスが1つでもあれば、その時点で勝敗が決する緊迫した展開です。

ペトロシアンの予想レンジが極めて広い点も特徴的です。4回転の成否次第で、メダル圏外から金メダル争いまで幅広い結果があり得ます。

過去の五輪フリーで起きた逆転劇から読み解く展望

フィギュアスケートの五輪では、フリーでの劇的な逆転が何度も起きています。今大会の展望を考えるうえで、過去の事例は大きなヒントになります。

2006年トリノ大会 荒川静香の逆転金メダル

20年前のトリノ大会で、荒川静香はSP3位からフリーでの逆転で金メダルを獲得しました。SP首位のサーシャ・コーエン(アメリカ)がフリーで2度の転倒を喫し、安定した演技を見せた荒川がトップに立ちました。

この大会が示す教訓は「フリーでのミスは致命的」という事実です。SPの貯金はフリーの転倒であっという間に消えます。

2022年北京大会 シェルバコワの冷静な逆転

前回の北京大会では、SP3位のアンナ・シェルバコワ(ROC)がフリーで高難度の4回転ジャンプを成功させ、逆転で金メダルを獲得しました。SP首位のカミラ・ワリエワがフリーで崩れ、SP2位のアレクサンドラ・トルソワもミスが出る中、安定した演技を見せたシェルバコワが頂点に立ちました。

この大会の教訓は「高難度技術と安定性の両立が金メダルの条件」ということです。

2026年ミラノ大会 ペアフリーでの三浦・木原組の逆転

今大会のペアフリーでは、SP5位の三浦璃来・木原龍一組が世界歴代最高得点158.13点を叩き出し、逆転で金メダルを獲得しました。SP首位から4位までの選手が軒並み崩れる中、圧巻の演技で会場を沸かせた逆転劇は記憶に新しいところです。

この事例は「五輪のフリーでは何が起きてもおかしくない」ことを改めて証明しました。女子シングルでも同様のドラマが生まれる可能性は十分にあります。

過去の事例が示す3つの法則

過去の五輪フリーの逆転劇を分析すると、共通する3つの法則が浮かび上がります。

第一に、SP首位の選手は「守り」の意識が強くなり、普段より硬い演技になりやすい傾向があります。中井亜美がこのプレッシャーをどう克服するかが注目されます。

第二に、SP3位以下の選手は「攻める」姿勢で臨む場合が多く、自己ベストを更新するケースが目立ちます。千葉百音やアリサ・リュウがこのパターンに当てはまる可能性があります。

第三に、経験豊富なベテラン選手は五輪のフリーで安定した演技を見せる確率が高い傾向があります。五輪3大会目の坂本花織にとっては有利な条件と言えるでしょう。

54年ぶりの表彰台独占がもたらす歴史的意義

日本勢の女子フィギュアスケート表彰台独占が実現すれば、冬季五輪全競技を通じて54年ぶりの快挙となります。その歴史的な重みを検証します。

1972年札幌大会「日の丸飛行隊」以来の偉業

冬季五輪で日本勢が表彰台を独占した唯一の例は、1972年札幌大会のスキージャンプ70メートル級です。笠谷幸生が金、金野昭次が銀、青地清二が銅を獲得し、「日の丸飛行隊」として語り継がれています。

あれから54年。同じ偉業をフィギュアスケートの女子シングルで達成すれば、スポーツ史に永遠に刻まれる瞬間となります。

五輪フィギュア女子では「史上初」の快挙

フィギュアスケート女子シングルにおいて、同一国の選手が表彰台を独占した例は五輪史上一度もありません。男子シングルでは1956年コルティナダンペッツォ大会でアメリカ勢が表彰台を独占した例がありますが、女子では前例がないのです。

今大会の開催地「コルティナダンペッツォ」は、まさに70年前にフィギュア男子の表彰台独占が起きた場所です。この偶然の一致が、女子でも歴史的快挙が起きることを暗示しているかのようです。

表彰台独占の条件

日本勢が表彰台を独占するためには、中井・坂本・千葉の3名全員がアリサ・リュウ(SP3位)を上回る必要があります。

千葉百音とリュウのSPの差は2.59点です。千葉がリュウを逆転するには、フリーで3点以上の差をつけることが求められます。今季のフリーの自己ベストはリュウが146.70点、千葉が144.94点と、リュウが約2点上回っています。

つまり千葉が表彰台に乗るためには、自己ベスト更新レベルの演技が必要です。一方で、リュウがSPと同様に回転不足判定を受ければ、その分だけ千葉の逆転チャンスが広がります。

表彰台独占の確率は、決して高いとは言えません。しかしSPの結果を見れば「十分に現実的な目標」であることも確かです。

初心者でも120%楽しめるフリー観戦のポイント

女子フィギュアスケートフリーを初めて観戦する方にも楽しんでいただけるよう、注目すべきポイントを整理します。

ジャンプの見分け方

フィギュアスケートのジャンプは全6種類あります。今大会の女子フリーで特に注目すべきジャンプは以下の3つです。

「トリプルアクセル」は前向きに踏み切る唯一のジャンプです。他の5種類はすべて後ろ向きに踏み切るため、前向きから跳び上がる選手を見たら「アクセル」と判断できます。中井亜美がこのジャンプを成功させるかどうかが最大の見どころです。

「トリプルルッツ」は左足の外側エッジ(つま先の外側)で滑りながら、右足のトウ(つま先のギザギザ)を突いて跳ぶジャンプです。基礎点5.90点は、アクセルを除く5種類の中で最も高い難度を持ちます。

「コンビネーションジャンプ」は1つのジャンプを着氷した直後に、そのまま次のジャンプを跳ぶ連続技です。着氷の瞬間に乱れがあるとセカンドジャンプに影響するため、高い技術が求められます。

演技構成点に注目する見方

ジャンプ以外にも、演技の質を左右する要素があります。「スケーティングスキル」は、氷上での滑りの美しさやスピード、エッジの深さを評価します。

坂本花織のスケーティングは、一歩ごとにぐんぐん加速する力強さが特徴です。他の選手と比較すると、同じリンクの広さでもスケールの大きさが段違いに感じられるはずです。

中井亜美は150cmの小柄な体格ながら、音楽との一体感に優れています。特にフリーの使用曲「What a Wonderful World」では、曲の盛り上がりに合わせた繊細な表現が見どころです。

千葉百音はスピンの美しさが際立っています。回転軸のブレの少なさと、ポジションの多彩さに注目してください。

得点表示の読み方

演技後にモニターに表示される得点を読み解くコツをお伝えします。

まず「TES」と表示されるのが技術点です。ジャンプやスピンなどの要素の合計得点を示します。女子フリーで80点を超えれば「非常にハイレベル」と言えます。

次に「PCS」と表示されるのが演技構成点です。女子フリーでは係数2.67倍が適用済みの数字が表示されます。70点を超えれば「トップクラスの表現力」と評価できます。

最後に「Ded.」と表示されるのが減点です。0.00であればノーミスの演技だったことを意味します。

これら3つの数字の関係(TES+PCS−Ded.=フリーの得点)を頭に入れておけば、各選手の演技の特徴と得点の内訳が一目で理解できるようになります。

リアルタイムで注目すべき瞬間

フリーの4分間の中で、特に緊張が高まる瞬間があります。

最も重要なのは「冒頭30秒間」です。多くの選手が最高難度のジャンプをプログラム冒頭に配置しています。中井亜美のトリプルアクセルもこのタイミングで実行されます。冒頭のジャンプの成否が、演技全体のメンタルに大きく影響します。

次に注目すべきは「演技後半の開始直後」です。後半に入ると基礎点が1.1倍になるボーナスが付くため、高難度のコンビネーションジャンプを後半冒頭に配置する選手が多くなります。

そして「ラスト30秒のステップシークエンス」も見逃せません。疲労が蓄積した演技終盤で、いかに豊かな表現を維持できるかは、演技構成点に直結します。

フリーの結果を左右する「メンタル」の要因

五輪のフリースケーティングは、技術だけでなく精神面の強さが問われる舞台です。各選手の心理状態とメンタル面の強みを分析します。

最終滑走のプレッシャーと中井亜美の対処法

SP1位の中井亜美は、最終滑走(24番滑走)を務めます。全選手の演技を見てから滑るため、暫定1位の得点を見ながらの演技になります。

五輪史上、最終滑走の選手がそのまま金メダルを獲得したケースは珍しくありません。しかし、逆にプレッシャーに飲まれて崩れた例も少なくありません。

中井は17歳という若さゆえの「怖いもの知らず」がプラスに働く可能性があります。SP後には「この舞台を最後の最後まで楽しむ気持ちで頑張ります」と語っており、プレッシャーを楽しさに変換できるメンタリティが伺えます。

「最後の五輪」というモチベーション

坂本花織にとって今大会は引退前の最後のオリンピックです。「もう後がない」という状況は、選手によってはプレッシャーにもなりますが、モチベーションの源泉にもなります。

坂本はSP後に「今までの中で感じたことのない不思議なリラックスモードになった」と語っています。引退を決めたことで逆に力が抜け、自然体で演技に臨めている様子がうかがえます。

北京五輪では銅メダルという結果でした。「あの時できなかった金メダルを、最後に」という強い想いが、フリーでの最高の演技につながる可能性があります。

チームの一体感が生む「追い風」

本記事の既出セクションでも触れたとおり、今大会の日本フィギュアスケートチームは驚異的な成績を残しています。団体戦銀メダル、男子の鍵山優真銀メダル・佐藤駿銅メダル、そしてペアの三浦・木原組の金メダルという流れが、女子3選手にも大きな追い風となっています。

スポーツ心理学では「集団効力感」と呼ばれる概念があります。チーム全体の成功体験が、個人の自信とパフォーマンスを高める現象です。今大会の日本チームには、この集団効力感が強く働いていると考えられます。

世界各国メディアの注目度と海外の反応

女子フィギュアスケートフリーは今大会最大の注目種目の一つです。世界各国のメディアも大きく報じています。

日本メディアの報道姿勢

日本国内では「表彰台独占なるか」という歴史的快挙への期待が高まっています。NHKはフリーの最終グループを地上波でライブ中継する体制を組んでおり、民放各局も速報体制を整えています。

スポーツ新聞各紙は「17歳の中井vs25歳の坂本」「師弟対決」「世代交代か、有終の美か」など、さまざまな切り口で報じています。

アメリカメディアの反応

アメリカメディアはアリサ・リュウの動向を中心に報じています。リュウは中国系アメリカ人であり、アメリカと中国の両方で高い人気を誇ります。

NBC(米五輪放送局)は「日本が表彰台を独占する可能性は高いが、リュウが割って入る余地は十分にある」と分析しています。

ロシアメディアの反応

ロシアメディアはペトロシアンの動向に注目しています。ロシア選手の五輪出場がAIN(個人の中立選手)として制限されている状況下で、ペトロシアンが上位に食い込めるかどうかは、ロシア国内でも大きな関心事です。

元五輪王者のプルシェンコ氏は自身のSNSで「ペトロシアンはフリーで4回転を2本跳ぶべきだ。それが金メダルへの唯一の道だ」と主張しています。

2026冬季オリンピック女子シングル フリースケーティング|SP結果・滑走順・メダル争い徹底解説

フリースケーティングで勝敗を分ける「演技構成点の係数」の仕組み

ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック女子シングルのフリースケーティングを語るうえで、避けて通れないのが「演技構成点の係数」です。この仕組みが金メダル争いの行方を大きく左右します。

ショートプログラム(SP)では、演技構成点の係数は0.80です。一方、フリースケーティング(FS)では係数が1.60に上がります。つまり、フリーではSPの2倍の比重で演技構成点が反映されます。

これが意味するのは明確です。演技構成点で他選手を圧倒する坂本花織にとって、フリーは逆転の絶好のチャンスとなります。

SPとフリーの配点構造を比較する

具体的に数字で見ていきます。SPで坂本花織は演技構成点37.15を獲得しました。中井亜美は33.69です。この差は3.46点でした。

フリーでは演技時間が長くなり、評価項目も増えます。係数が2倍になることで、仮にSPと同じ評価がつけば演技構成点の差は約6.9点に広がります。

比較項目ショートプログラムフリースケーティング
演技時間2分40秒(±10秒)4分(±10秒)
ジャンプ本数3本7本
演技構成点の係数0.801.60
坂本と中井のPCS差(SP実績)3.46点推定6〜8点

坂本がフリーで逆転するシナリオは、この演技構成点の構造に支えられています。SPの1.48点差を覆すには、技術点での大きな取りこぼしがなければ十分に可能です。

技術点と演技構成点のバランスが鍵

ただし、中井亜美にはトリプルアクセルという武器があります。SPでは技術点45.02を記録し、坂本の40.08を約5点上回りました。フリーでもトリプルアクセルを成功させれば、技術点の差で演技構成点の不利を相殺できます。

THE ANSWERの分析によると、フリーの今季自己ベストは中井が149.08点、坂本が150.13点です。その差はわずか1.05点。SP得点を加算すると、両者の合計点はほぼ並びます。

つまり、この金メダル争いは「中井のジャンプ精度」と「坂本の表現力」の真っ向勝負です。どちらかにミスが出れば、一気に差がつく拮抗した戦いになります。

各選手のフリープログラム使用曲と演技の見どころ

フリースケーティングの4分間は、選手の個性が最も色濃く表れる舞台です。使用曲の選択にも、各選手の想いやストーリーが込められています。

中井亜美「What a Wonderful World」

中井亜美のフリー使用曲は「What a Wonderful World(この素晴らしき世界)」です。ルイ・アームストロングの名曲として世界中で愛されているこの楽曲を、振付師の宮本賢二氏がアレンジしました。

17歳という若さで五輪の最終滑走に立つ中井が、「素晴らしき世界」を演じる構図は象徴的です。SPではイタリア映画「道」の音楽でミラノの観客を味方につけました。フリーでも楽曲の世界観に入り込めるかがポイントです。

技術面では、冒頭にトリプルアクセルを配置する構成が予想されます。SP同様にクリーンに着氷すれば、技術点で大きなリードを築けます。演技後半にも高難度のコンビネーションジャンプを組み込んでおり、基礎点の1.1倍ボーナスを活かす戦略です。

坂本花織「愛の讃歌(Hymne à l’amour)」

坂本花織のフリーは、エディット・ピアフの名曲「愛の讃歌(Hymne à l’amour)」です。フランスのシャンソンを代表するこの楽曲は、愛する人への深い想いを歌ったものです。

今季限りで引退する坂本にとって、このプログラムは集大成の意味を持ちます。SPでは「Time To Say Goodbye」を使用し、サラ・ブライトマンの楽曲再生数が2050%急上昇する社会現象を生みました。

団体戦のフリーではこの「愛の讃歌」で148.62点をマークしています。すでに五輪の舞台でこのプログラムを演じた経験があることは、大きなアドバンテージです。「守るものがない」と語った坂本が、最後の五輪フリーでどこまで爆発するかに注目が集まります。

千葉百音「ロミオとジュリエット」

千葉百音のフリー使用曲は映画「ロミオとジュリエット」のサウンドトラックです。「A Thousand Times Goodnight」「Kissing You」など、映画の名場面を彩る楽曲で構成されています。

フィギュアスケートにおいて「ロミオとジュリエット」は王道中の王道です。羽生結弦が2014年ソチ五輪で金メダルを獲得した際にもこの楽曲を使用しました。千葉は同じ宮城県出身の羽生をリスペクトしており、この選曲には特別な意味が込められています。

SPでは「ラストダンス」で会場の手拍子を誘い、演技点で高い評価を得ました。フリーでも持ち前の音楽との一体感を発揮できれば、メダル圏内への浮上は十分に可能です。

アリサ・リュウのフリープログラム

SP3位のアリサ・リュウ(アメリカ)は、ダイナミックなジャンプが持ち味の世界選手権ディフェンディングチャンピオンです。フリーの今季ベストは146.70点を記録しています。

リュウのフリーでは、SPで回転不足を取られた連続ジャンプの修正が鍵です。すべてのジャンプをクリーンに降りれば、日本勢の表彰台独占を阻止する最有力候補となります。

公式練習で見えた各選手のコンディション

フリー前日の2月19日に行われた公式練習では、各選手の調整状況がうかがえました。この情報は、フリー本番の演技を予測するうえで重要な手がかりとなります。

坂本花織は万全の仕上がり

読売新聞やスポーツ報知の報道によると、坂本花織はフリー「愛の讃歌」の曲かけ練習を実施しました。3連続ジャンプを含む各要素を軽快にこなし、好調をアピールしています。

坂本は団体戦、SP、そして練習と、今大会を通じて安定した演技を続けています。SPでの「不思議なリラックスモード」がフリーでも維持できるかが注目です。

中井亜美はトリプルアクセルを入念に確認

中井亜美は公式練習でトリプルアクセルを繰り返し確認しました。ただし、曲かけ練習ではジャンプを見せず、動きの確認に徹しています。

BSN新潟放送の報道では、中井がリラックスした様子で調整していたと伝えられています。17歳とは思えない落ち着きが、本番でも発揮されるかに注目です。

ペトロシアンの4回転は「申告なし」の情報

最も注目を集めていたペトロシアンの4回転ジャンプについて、新たな情報が入っています。RONSPOの報道によると、事前に申告されたフリーのプログラム構成には4回転が含まれていません。

申告構成は「3回転ルッツ+3回転トゥループ」から始まり、すべて3回転以下のジャンプで構成されています。ただし、申告と実際の演技は異なる場合があります。公式練習では4回転トゥループを着氷させた場面もあり、本番で投入するかどうかは依然として不透明です。

元五輪王者のエフゲニー・プルシェンコ氏は「メダルを狙うなら4回転を2本跳ぶべき」とコメントしています。このアドバイスがフリー本番に影響するかは、演技が始まるまで分かりません。

選手名公式練習の状況フリーへの懸念材料
坂本花織曲かけ練習で好調回転不足判定の再発
中井亜美3Aを入念確認五輪フリーのプレッシャー
千葉百音安定した調整SP冒頭のミスの修正
アリサ・リュウ連続ジャンプの修正回転不足の解消
ペトロシアン4回転着氷あり申告構成に4回転なし

五輪フィギュア女子で表彰台独占が実現すれば「史上初」の快挙

今大会の最大の注目ポイントは、日本勢による女子シングル表彰台独占の可能性です。これが実現すれば、五輪フィギュアスケート女子の歴史に刻まれる前代未聞の偉業となります。

五輪フィギュアでの表彰台独占の歴史

五輪フィギュアスケートにおいて、一つの国がメダルを独占した事例はごくわずかです。

大会種目
1956年 コルティナダンペッツォ男子シングルアメリカヘイズ・ジェンキンスロナルド・ロバートソンデイヴィッド・ジェンキンス
2014年 ソチ(非公式記録)女子シングルロシアソトニコワ(該当なし)(該当なし)

女子シングルでは、ロシアが圧倒的な強さを誇った2010年代後半から2020年代前半にかけても、五輪での表彰台独占は実現していません。2022年北京大会ではロシア3選手がエントリーしましたが、ワリエワのドーピング問題が大会を混乱させました。

つまり、日本勢が金・銀・銅を独占すれば、女子シングルでは五輪史上初の快挙です。

日本冬季五輪「54年ぶり」の表彰台独占

日本のオリンピック全競技を見ても、表彰台独占は極めて稀な出来事です。冬季五輪での前例は1972年札幌大会のスキージャンプ70メートル級のみです。

笠谷幸生が金、金野昭次が銀、青地清二が銅を獲得した「日の丸飛行隊」の快挙から54年。ミラノの氷上で3人の日本人女性スケーターが、その偉業を再現しようとしています。

スポニチの分析では、表彰台独占のためには千葉百音がSP3位のアリサ・リュウ(76.59点)を逆転する必要があります。両者の差は2.59点。フリーの配点を考えれば、十分に逆転可能な数字です。

日本冬季五輪メダル「100個」の節目

日経新聞やスポーツ各紙が報じているとおり、日本の冬季五輪メダル総数は今大会でここまで98個に達しています。女子シングルで2個以上のメダルを獲得すれば、通算100個の大台に到達します。

この節目のメダルが、フィギュアスケート女子という注目度の高い種目で実現すれば、日本のスポーツ史に残る象徴的な瞬間となるでしょう。

フリーで逆転が起きた五輪女子シングルの過去の事例

SPの順位がそのままフリーに反映されるとは限りません。五輪の歴史には、フリーでの劇的な逆転劇が数多く刻まれています。

2010年バンクーバー大会:キム・ヨナの圧勝とゲームチェンジ

2010年バンクーバー五輪では、SPでリードしたキム・ヨナ(韓国)がフリーでもほぼ完璧な演技を披露し、総合228.56点の世界歴代最高得点(当時)で金メダルを獲得しました。

この大会で注目すべきは、SP3位だった安藤美姫がフリーで順位を落とし、SP4位のジョアニー・ロシェット(カナダ)が銅メダルを獲得した点です。フリーでの演技次第で順位が入れ替わる好例です。

2022年北京大会:坂本花織の銅メダル

前回の2022年北京大会では、坂本花織がSP3位からフリーでも安定した演技を見せ、銅メダルを獲得しました。一方、SP首位だったワリエワはフリーで崩れ、4位に終わっています。

この経験を持つ坂本は、五輪フリーの怖さと勝ち方の両方を知っています。「守るものがない」と語った言葉の裏には、フリーこそが真の勝負であるという確信があるのかもしれません。

今大会のペアで起きた大逆転劇

今大会でもすでにフリーでの劇的な逆転が起きています。ペアの三浦璃来・木原龍一組は、SP5位から世界歴代最高得点の158.13点を叩き出し、逆転で金メダルを獲得しました。

男子シングルでも、SP首位のイリア・マリニン(アメリカ)がフリーで2度の転倒を喫して8位に沈みました。一方、SP9位だった佐藤駿がフリーで巻き返して銅メダルを獲得しています。

これらの事実が証明しているのは、フリースケーティングでは何が起こるか分からないということです。SP首位の中井亜美にも、追う坂本花織にも、千葉百音にも、それぞれにチャンスがあります。

初心者でも分かるフリースケーティングの採点ポイント

フィギュアスケートを初めて見る方にとって、採点の仕組みは複雑に感じるかもしれません。フリースケーティングの見どころを楽しむために、押さえておきたいポイントを解説します。

ジャンプの種類と基礎点

フリーでは7本のジャンプを跳びます。それぞれのジャンプには「基礎点」が設定されています。

ジャンプの種類3回転の基礎点特徴
トリプルアクセル(3A)8.00点前向き踏切の最高難度ジャンプ
トリプルルッツ(3Lz)5.90点後ろ向き踏切・外側エッジ
トリプルフリップ(3F)5.30点後ろ向き踏切・内側エッジ
トリプルループ(3Lo)4.90点右足踏切のジャンプ
トリプルサルコウ(3S)4.30点左足内側エッジで踏切
トリプルトゥループ(3T)4.20点つま先で突いて踏切

中井亜美が跳ぶトリプルアクセルは基礎点8.00点です。坂本花織の最高難度ジャンプであるトリプルルッツは5.90点です。この2.10点の差が、技術点における中井の強みとなっています。

演技後半ジャンプの1.1倍ボーナス

フリースケーティングでは、演技後半(演技開始から2分以降)に跳んだジャンプの基礎点が1.1倍になります。

例えば、トリプルルッツ(基礎点5.90点)を演技後半に跳ぶと、基礎点は6.49点に増加します。選手は体力的に厳しい演技後半にあえて高難度ジャンプを配置し、得点の最大化を図ります。

坂本花織はこの後半ボーナスの活用が巧みな選手です。体力とスケーティングスキルを武器に、後半にも安定したジャンプを決める技術を持っています。

出来栄え点(GOE)の重要性

各要素には-5から+5の出来栄え点(GOE:Grade of Execution)がつきます。完璧なジャンプには高い加点がつき、転倒や回転不足には減点がつきます。

SPで中井亜美のトリプルアクセルには、GOEで約1.71点の加点がつきました。これは9名のジャッジの多くが+2〜+3の評価をしたことを意味します。フリーでも同様のクオリティを維持できるかが勝敗を分けます。

転倒・回転不足のペナルティ

転倒した場合、GOEは自動的に-5以下となり、さらに1回の転倒につき1点が総得点から減点されます。回転不足(アンダーローテーション)の場合は基礎点が75%に減額されます。

つまり、1本のジャンプの転倒で失う得点は、基礎点の加点分を含めると5〜8点にも及びます。このリスクを踏まえると、ペトロシアンが4回転に挑戦するかどうかの判断がいかに難しいかが分かります。

フリー当日の視聴ガイドと楽しみ方

ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック女子シングルのフリースケーティングを最大限に楽しむためのガイドをお届けします。

放送スケジュール一覧

放送局放送開始時間(日本時間)放送内容
NHK BS2月20日 午前3:00〜競技開始から全選手放送
NHK Eテレ2月20日 午前6:00〜最終グループのライブ中継
NHKプラス2月20日 午前3:00〜ネット同時配信
TVer2月20日 午前3:00〜ライブ配信
gorin.jp2月20日 午前3:00〜ライブ配信

仕事や学校の関係で早朝視聴が難しい方は、NHKプラスの見逃し配信やTVerのアーカイブを活用するのがおすすめです。

フリーの見どころタイムライン

フリースケーティングの4分間を楽しむために、注目すべきポイントをお伝えします。

演技冒頭の30秒間は、最も重要なジャンプが配置されるゾーンです。中井亜美であればトリプルアクセル、坂本花織であればトリプルルッツからの連続ジャンプが冒頭に来る可能性があります。ここでクリーンに着氷すれば、選手はリズムに乗り、残りの演技にも好影響を与えます。

演技中盤の1分30秒〜2分30秒は、スピンやステップシークエンスが配置される「つなぎ」の区間です。この区間の滑りが演技構成点に大きく影響します。坂本花織のスケーティングスキルが最も光るのは、この中盤の滑らかな動きです。

演技後半の2分30秒〜4分は、体力との勝負になります。1.1倍ボーナスのかかるジャンプが3〜4本入ることが多く、ここでの成否がメダルの色を決めます。疲れが出る中でもジャンプを正確に降りられるか。選手の精神力と体力が試される最も緊張感の高い時間帯です。

日本フィギュアスケートの黄金時代を検証する

2026冬季オリンピック女子シングルのフリースケーティングは、日本フィギュアスケートが迎えた「黄金時代」の象徴とも言える大会です。

今大会の日本フィギュア全成績

種目選手名成績
団体戦日本チーム銀メダル
男子シングル鍵山優真銀メダル
男子シングル佐藤駿銅メダル
ペア三浦璃来・木原龍一金メダル(世界歴代最高得点)
女子シングル中井亜美SP首位(フリー待ち)
女子シングル坂本花織SP2位(フリー待ち)
女子シングル千葉百音SP4位(フリー待ち)

すでに確定しているメダルは金1、銀2、銅1の計4個です。女子シングルでメダルが加われば、日本フィギュアスケート史上最多の五輪メダル数となります。

世代交代と継承のストーリー

今大会の女子シングルは、世代交代のストーリーとしても見応えがあります。

25歳の坂本花織は、2018年平昌大会から3大会連続で五輪に出場しています。北京大会の銅メダル、世界選手権3連覇と、日本女子フィギュアのエースとして時代を築きました。今季で引退を表明しており、ミラノが最後の舞台です。

20歳の千葉百音は、2大会連続金メダリスト・羽生結弦と同じ宮城県仙台市出身です。「仙台のフィギュアの伝統を受け継ぐ」という使命感を持ち、着実に実力を伸ばしてきました。昨季の世界選手権銅メダルで存在感を示しています。

17歳の中井亜美は、新潟市出身のシニアデビューイヤーの新星です。ISUが年齢制限を引き上げた後の新時代を象徴する選手であり、今大会で結果を残せば、次の2030年大会まで日本女子フィギュアの中心を担う存在となります。

坂本から千葉、そして中井へ。日本女子フィギュアのバトンは、ミラノの氷上で確実に受け継がれようとしています。

「りくりゅう」の金メダルが生んだ追い風

今大会の日本フィギュア躍進の転機となったのは、ペアの三浦璃来・木原龍一組による金メダルです。SP5位からフリーで世界歴代最高得点を叩き出しての逆転劇は、チーム全体に計り知れない勇気を与えました。

坂本花織は「りくりゅうから黄金のバトンを受け取った」と表現しています。千葉百音は「3人でテレビで演技を見て感動した」と語りました。中井亜美も「先輩たちの姿を見て、自分も思い切り楽しもうと決めた」とコメントしています。

チームとしての一体感が個人の力を引き出す。これは、フィギュアスケートという個人競技の中でも見られる「チーム力」の好例です。

フリースケーティング本番で注目すべき5つのポイント

2026冬季オリンピック女子シングルのフリースケーティングは、日本時間2月20日午前3時に開始されます。最終グループの演技が始まるのは午前6時頃です。本番を楽しむための注目ポイントを5つに絞って解説します。

1. 中井亜美のトリプルアクセルの成否

フリーの勝敗を最も大きく左右するのは、最終滑走・中井亜美のトリプルアクセルです。SPでは完璧に着氷させましたが、フリーではSPと異なるプレッシャーがかかります。最終滑走ということは、他の全選手の得点が出た状態で氷に乗ることを意味します。

過去の五輪では、最終滑走者が優勝する確率は決して高くありません。すべての重圧を受け止めて跳ぶトリプルアクセルが、金メダルの鍵を握ります。

2. 坂本花織のラストダンスの完成度

坂本花織にとって「愛の讃歌」は、競技人生最後のフリープログラムです。すべてを出し切る演技ができれば、演技構成点で他の追随を許さないスコアが期待できます。

「守るものがない」という言葉の通り、攻めの姿勢でフリーに臨めるかどうか。最後の五輪にふさわしい圧巻の演技を見せてほしいと、多くのファンが願っています。

3. 千葉百音のノーミス演技

千葉百音がメダルを獲得するためには、フリーでのノーミスが絶対条件です。SP冒頭のコンビネーションジャンプの着氷が詰まった反省を活かし、フリーでは最初のジャンプから確実に決めていく必要があります。

千葉が先に高得点をマークすれば、後続の坂本と中井にプレッシャーを与えることもできます。「いけるところまでいってやろう」という千葉の言葉が、どこまで現実になるかに注目です。

4. アリサ・リュウの表彰台独占阻止

日本勢の表彰台独占を阻む最大の壁はアリサ・リュウです。SP76.59点で3位のリュウは、千葉百音とは2.59点差。フリーでリュウがノーミスの演技を見せた場合、千葉がこの差を埋めるのは容易ではありません。

リュウは千葉より1つ前の22番滑走です。リュウの得点が出た段階で、千葉を除く日本勢2人の滑走が残っています。リュウの得点が、最終グループの空気を変える可能性があります。

5. ペトロシアンの「隠し玉」

申告構成に4回転がないとはいえ、ペトロシアンが本番で急遽投入する可能性は否定できません。公式練習で着氷している実績があり、メダルを獲るためには「何かを変える必要がある」ことを本人も理解しているはずです。

SP72.89点の5位から表彰台に上がるには、フリーで150点近い得点が必要です。4回転なしでこの得点を達成するのは極めて難しく、最終的に本番で挑戦する判断を下す可能性は残されています。

2026冬季オリンピック女子フリースケーティングが刻む歴史的一夜

2026冬季オリンピック女子シングルのフリースケーティングは、単なるスポーツ競技を超えた意味を持つ一戦です。

荒川静香がトリノで金メダルを獲得してから20年。日本女子フィギュアスケートは、この20年間で世界のトップに立ち続けてきました。浅田真央のトリプルアクセル、宮原知子の美しいスピン、そして坂本花織の世界選手権3連覇。先人たちが築いた道の先に、ミラノの舞台があります。

フリースケーティングの4分間に、選手たちはすべてを懸けます。中井亜美の若さと勢い。坂本花織の経験と表現力。千葉百音の安定感と成長。三者三様の強みを持つ日本勢が、どのような結末を迎えるのか。

メダルの色がどうなるかに関わらず、この大会は日本フィギュアスケート史に刻まれる一夜となるでしょう。日本時間2月20日午前6時。ミラノの氷上で、歴史が動く瞬間を見届けましょう。

女子フィギュアスケートフリーの展望と最終予想

ここまでの分析を総合し、女子フィギュアスケートフリーの最終的な展望をお伝えします。

金メダル予想

金メダル争いは中井亜美と坂本花織の一騎打ちです。両者ともにノーミスの場合、勝敗は1〜3点差の僅差となる公算が大きいでしょう。

中井が金メダルを獲得する条件は「トリプルアクセルを含む全ジャンプの成功」です。坂本が金メダルを獲得する条件は「全ジャンプのクリーン着氷と、演技構成点での圧倒」です。

結論として、両者の勝率はほぼ五分五分と見ます。ジャンプ1本のGOEの差で決着がつく極限の勝負です。

銀メダル・銅メダル予想

銅メダル争いは、アリサ・リュウと千葉百音の直接対決です。リュウがSPでの2.59点のリードを守り切れるか、千葉がフリーで逆転できるかが焦点となります。

ペトロシアンが4回転を成功させた場合、メダル争いの構図は一変します。4回転2本成功なら金メダル争いにも加わるため、全員にとっての最大の変数です。

最も起こりうるシナリオ

最も蓋然性が高いシナリオは「中井と坂本のワンツーフィニッシュ、3位争いでリュウか千葉のいずれかがメダル獲得」という展開です。日本勢の表彰台独占が実現するかどうかは、千葉百音のフリーの出来次第です。

いずれにしても、2月20日の早朝に待っているのは、フィギュアスケート史に刻まれる歴史的な一戦です。「技術の中井」対「表現の坂本」、そして「表彰台独占」か「海外勢の意地」か。4分間に凝縮されたドラマを、ぜひリアルタイムで見届けてください。

2026冬季オリンピック 女子シングル スケート フリースケートの展望と注目ポイント総括

2026冬季オリンピックの女子シングルスケートフリースケートは、フィギュアスケート全種目の中で最後を飾る競技として、大会のフィナーレを盛り上げます。

今大会のフリーにおける最大の注目ポイントは、以下の5つに集約されます。

  • 中井亜美がSP首位の勢いを維持し、17歳でのシニアデビューシーズンに五輪金メダルを獲得するのか
  • 今季引退の坂本花織が1.48点差を逆転し、最後の五輪で悲願の金メダルを手にするのか
  • 千葉百音がフリーでの巻き返しを見せ、日本勢による史上初の女子シングル表彰台独占を達成するのか
  • アリサ・リュウが世界女王の実力を発揮し、日本勢の独占を阻止するのか
  • アデリア・ペトロシアンがフリーで4回転ジャンプを投入し、台風の目となるのか

日本時間2月20日午前3時から始まるフリースケーティングでは、最終第4グループが6時以降に登場し、7時前にはすべてのメダルの色が確定します。日本フィギュアスケート史に新たな1ページが刻まれるその瞬間を、ぜひリアルタイムで見届けてください。

ショートプログラムの結果が示した通り、今大会の女子シングルは日本勢が圧倒的な存在感を見せています。中井、坂本、千葉の3選手それぞれが持つ個性と強みが、フリーの4分間でどのように発揮されるのか。世界中が注目するミラノの氷上で、日本フィギュアスケートの新たな伝説が生まれようとしています。

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