あらすじ
主人公は桐谷湊(きりたにみなと)、28歳のごく普通の会社員。毎朝同じ電車に乗り、同じコンビニでコーヒーを買い、何の変哲もない日常を送っている。
ストーリー
冒頭 ― いつもの朝
湊はいつも通り、午前7時32分発の電車に乗る。イヤホンで音楽を聴きながら、ぼんやりと窓の外を眺めている。車内には見慣れた顔ぶれ――メガネの老人、制服の女子高生、スーツ姿のサラリーマンたち。何も変わらない、退屈な朝。
ふと、向かいの席に座る白髪の少女に気づく。年齢は16歳くらいだろうか。真冬なのに薄着で、古びたノートを膝の上に広げている。目が合うと、少女は不思議な笑みを浮かべてこう呟く。
「――ねえ、あなた、今日で何周目?」
湊は意味がわからず、聞き返す間もなく電車が駅に着き、少女は人混みに消える。
中盤 ― 既視感
その日の午後、湊は交差点で交通事故を目撃する。一台のトラックがバイクに突っ込み、バイクの男性が倒れる。湊は119番を押そうとスマホを取り出した瞬間、強烈な既視感に襲われる。
――この光景を、前にも見た気がする。
事故の被害者の顔。散乱するバイクの破片の位置。周囲の悲鳴。すべてが、記憶の奥底から引きずり出されるように「知っている」。
その夜、自宅に帰った湊は、洗面台の鏡を見て凍りつく。左の手首に、正の字のような刻印が浮かび上がっている。数えると――「正」が4つと一画。合計21本の線。
終盤 ― 崩壊する日常
翌朝、湊はまたいつも通りに目覚める。午前7時32分の電車に乗る。すると、向かいの席に、また同じ白髪の少女がいる。同じノート。同じ薄着。そして、同じ言葉。
「――ねえ、あなた、今日で何周目?」
今度は湊が問い返す。「それ、昨日も言ったよな?」
少女の目が大きく見開かれる。そして、初めて本当に驚いた顔をして、こう言う。
「……覚えてるの?あなた、覚えてるんだ。21周目にして、初めて」
湊が混乱する中、少女はノートを開いて見せる。そこには湊の名前、住所、行動パターン、そして「死亡日時:2月15日午後6時03分」という一行が書かれている。
少女は静かに告げる。
「あなたは2月14日と15日の2日間を、もう21回繰り返している。そして毎回、15日の午後6時03分に死ぬ。原因は毎回違う。でも結果は同じ。私はそれを記録してきた」
湊が声を震わせて聞く。「……お前は、何者だ」
少女はノートを閉じ、窓の外に目を向ける。
「私は観測者。あなたが死ぬたびに、世界が巻き戻る。理由はわからない。でもひとつだけ確かなことがある」
電車が次の駅に滑り込む。少女が立ち上がり、降り際にこう言い残す。
「22周目で、ようやくゲームが始まる」
ラストページ
湊がふと手首を見ると、正の字の刻印の横に、新しい一画が刻まれていく。
22本目。
ナレーション:
「桐谷湊の最も長い2日間が、今度こそ本当に始まる――」
第1話「午前7時32分」――完
次回予告:第2話「死に方リスト」
ノートに記された21通りの死因。その全てに、ある共通点が隠されていた――。
ループもの×デスゲーム的なサスペンスで、「なぜ湊だけがループするのか」「少女の正体は何か」「22周目で何が変わるのか」といった謎を軸に、続きが気になる構成になっています。

