漫画【リセット屋】第2話「名前のない写真」

「名前のない写真」
前回のあらすじ
リセット屋で3年前の1日をやり直した蓮。プレゼンは成功し、出世の道が開けた——しかし代償として、胸ポケットの写真に写る女性の記憶を完全に失ってしまった。
第2話 本編
冒頭——朝、蓮は以前とは別の高層マンションで目を覚ます。出世した”改変後の世界”での暮らしが始まっている。スーツも髪型もきまっている。だが、枕元にはあの写真。見つめても何も思い出せない。裏にはこう書いてある。
「蓮へ ずっと応援してるよ ——あ」
名前の最初の一文字だけが残っている。「あ」で始まる名前。蓮はなぜか胸が痛む。記憶はないのに、体が覚えている。
展開①——日常の違和感
出社すると、かつて冷たかった同僚たちが蓮に敬意を払っている。上司からも新プロジェクトのリーダーを任される。順風満帆のはずなのに、蓮はふとした瞬間に違和感を覚える。
- 昼食に無意識に二人分の紅茶を注文してしまう。
- 帰り道、知らないはずの小さな花屋の前で足が止まる。
- スマホの連絡先に「あ」で始まる名前が一件もない。まるで最初から存在しなかったかのように。
蓮は気づく。記憶を失っただけではない——世界からその人の”痕跡”が薄れ始めている。
展開②——二人目の客
夜、蓮がリセット屋を再び訪れると、先客がいる。女子高生・南条雫(なんじょうしずく)、17歳。目に涙を溜めながらも、気丈に振る舞っている。
雫はヨミに頼んでいる。「お母さんが事故に遭った日を、やり直したい」と。
蓮は思わず声を上げる。「やめろ」と。
雫は睨みつける。「あんたに関係ないでしょ」。蓮は自分の経験を話そうとするが、何を失ったのか自分でもうまく説明できない。写真を見せても、雫には「ただの知らない女の人」にしか見えない。
ヨミがクスクスと笑う。
「忠告は自由ですよ。でも、選ぶのはお客様自身。それが”リセット屋”のルールです」
クライマックス——雫の選択
蓮の制止も虚しく、雫は「お母さんの事故の日」を選ぶ。ヨミが指を鳴らすと、雫の姿がふっと消える。
蓮はカウンターを叩く。「あの子から何を奪うつもりだ!」
ヨミは初めてお面を少しずらす。口元だけが見える。その口元は笑っていない。
「奪うなんて人聞きの悪い。お客様が”差し出す”んです。……それに、黒崎さん。あなたもまだ、本当の代償に気づいていない」
蓮の背筋が凍る。「本当の代償……?」
ラスト——伏線の一撃
翌朝、蓮が会社に出勤すると、受付の女性に見慣れない顔がある。ネームプレートには——
「南条彩香(なんじょうあやか)」
蓮は何も感じない。ただの知らない人。だが読者にはわかる。「あ」で始まる名前。「南条」という苗字。雫という女子高生——
最後のコマ。蓮の胸ポケットの写真が、ほんの少しだけ色褪せている。
ヨミのモノローグが静かに響く。
「記憶が消えると、縁も消える。縁が消えると、存在が薄れる。——これが”リセット”の本当の意味ですよ」
次回予告
第3話「母と娘」
雫がやり直した”あの日”。母・彩香の事故は防げるのか?そして雫が差し出す”一番大切な記憶”とは——?蓮と彩香と雫、三人の運命が交差し始める。
第2話のポイント
第1話で提示した「記憶を失う」という設定を、第2話で一気に深化させました。記憶が消えるだけでなく、存在そのものが世界から薄れていくという新ルールの提示。そして蓮が記憶を失った女性・彩香と、新キャラ・雫が親子だったという衝撃の接続。蓮は知らず知らずのうちに、自分が愛した人の娘と出会っていた——この「読者だけが気づく構造」が、続きを読ませる強力なフックになります。
