五か月児のポジティブな感情が記憶定着に深く関係する理由とは?

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森田結衣

乳児期の記憶形成においてポジティブな感情が大きな役割を果たすことが、最新の研究で明らかになりました。この発見は、乳児の健全な脳の発達と認知機能向上につながる重要な示唆を含んでいます。

五か月児がポジティブな声と形を鮮明に記憶する驚きの結果

研究チームは、五か月児を対象に以下のような実験を行いました。

・幾何学的な形を五か月児に見せながら、ポジティブな声のトーン、ニュートラル(中立的)な声のトーン、ネガティブな声のトーンで呼びかける
・5分後と1日後に、同じ形を見せて記憶しているかどうかをテスト

その結果、ポジティブな声と結びついた形は、5分後と1日後のテストでもはっきりと記憶されていました。一方、ニュートラルやネガティブな声と結びついた形は、ほとんど記憶に残っていませんでした。

ポジティブな感情が脳内の記憶形成メカニズムを活性化

この実験結果から、ポジティブな感情が乳児の記憶形成に大きく影響することが分かりました。その理由として、以下のようなメカニズムが考えられています。

・ポジティブな感情は、乳児の注意力と覚醒度を高める
・注意が高まると、脳内の情報処理能力が向上する
・情報処理能力の向上が、記憶の定着につながる

つまり、ポジティブな感情は、乳児の脳内で記憶形成に関わる領域の活性化をもたらし、学習内容の記憶定着を助けているのです。

脳科学の視点から見るポジティブな感情と記憶の関係

ポジティブな感情が記憶に良い影響を及ぼすメカニズムについて、脳科学的な見方もあります。

ポジティブな感情を感じると、脳内でドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質が活性化されます。これらの神経伝達物質は、記憶の形成や保存に深く関わる海馬や扁桃体などの脳領域の機能を高めることが知られています。

つまり、ポジティブな感情によって引き起こされる神経化学的変化が、記憶力の向上につながっている可能性があるのです。

大人にも当てはまる?ポジティブな感情の力

ポジティブな感情と記憶の関係は、乳児だけでなく大人にも当てはまる可能性があります。これまでの研究で、ポジティブな感情は学習や創造性、問題解決能力など、さまざまな認知機能を向上させることが分かっています。

つまり、ポジティブな気分で取り組むことで、新しい知識や経験をより効果的に記憶に定着させられるかもしれません。逆に、ネガティブな気分は記憶力を低下させる可能性もあります。

乳児期からポジティブな感情を育む大切さ

今回の研究結果を踏まえると、乳児期から子どもにポジティブな感情を育むことが、健全な脳の発達と認知機能の向上につながると考えられます。

具体的には、以下のようなコミュニケーションが大切です。

・優しく語りかける
・笑顔で接する
・スキンシップをたくさん取る
・一緒に遊ぶ
・安心感を与える

このような行動は、赤ちゃんに愛されているという感覚を与え、ポジティブな感情を育むのに役立ちます。そして、そのポジティブな感情が脳内の記憶形成メカニズムを活性化し、学習内容をしっかりと記憶に定着させることにつながるのです。

ポジティブな感情で豊かな人生を

乳児期における最新の研究結果は、ポジティブな感情が記憶形成に大きな影響を及ぼすことを明らかにしました。私たち大人にとっても、ポジティブな感情を意識することが、より良い記憶力と認知機能の向上につながるでしょう。

ポジティブな気分で日々の生活に取り組み、新しい知識や経験を吸収していけば、人生がより豊かで実りの多いものになるはずです。乳児期から大人まで、ポジティブな感情の力を活かすことが大切なのです。